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ドント・ブリーズのsatoshiのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
4.3
 普段こういう映画は見ないのですが、評判がいいし、何事も経験だと思ったので、鑑賞しました。結果、とても面白かったです。設定を聞いただけでは、単純なホラー映画だと思ってしまいますが、そんなものにとどまらない内容でした。

 まずこの映画、脚本が本当に練りこまれているなと感じました。伏線の張り方がうまいし、矛盾もないです。登場人物たちがこう行動したから今この結果がある、みたいな展開や、前半の台詞が後半の展開で活きてきたり、台詞も前半と後半で違った意味として捉えることができるものもあります。この最たるものは中盤と後半のあの台詞でしょう。あの台詞の意味が分かってから、この作品は超常的な存在を相手にするホラーになると思います。この展開の切り替えも上手いなと。
 
 また、伏線の張り方と関連して、序盤で家の間取りを観客にさりげなく見せるくだりも良いです。あれでかなり見やすくなったと思います。

 伏線もすごいですが、何といってもこの映画はあの盲目の老人でしょう。怖すぎです。どこにでも振り返るといるし、心臓に悪いです。また、「見えない」ことも重要で、見えないことで、恐怖が目の前にあることを認識でき、ハラハラ感が増します。

 この作品は、序盤こそホラーではなく、スリラーのようです。ですが、やっぱり最後はホラーです。別に超常的な存在が出てくるから怖いのではなく、むしろ普通の人間だからこそ怖いのです。先にも書きましたが、終盤である事実が明らかになります。その事実で、この老人が完全に人間として壊れてるという事が判明します。そんな人間と戦うのですから、絶望しかありません。最後の10分は、「早く終わってくれ」と祈っていました。

 犬も本当に恐ろしいですね。ただ、私はMASTER キートンの犬の話を連想していたので、「そこは舌をつかむんだよ!」と心の中で叫んでいました。

 最後に、劇中で、「神はなぜこのようなものを生かすのか」みたいな台詞があります。確かに、あの老人にとって、彼女は許せない存在だったのだと思います。それはそうです。しかし、主人公たちにとっては、あの老人こそ、老人にとっての彼女のように許せない存在だったのだと思います。こういうところも本当にいいですね。最後の老人の顔がとてつもなく怖いですね。秀作です。
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