あんがすざろっく

フェームのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

フェーム(1980年製作の映画)
4.8
まだまだ見ていない傑作がたくさんあるんだなぁ。
フィルマの皆さんのレビューを拝見したり、最近UNEXTを見始めてからは、特にそう思います。

前回に続き、今回もアラン・パーカー監督作品をレビューします。


作品の完成度が高い傑作だったり、思わぬ掘り出し物に出会った時って、映画ファンやってて良かったなぁって、感動しますよね。
それに加えて、自分の個人的な思い入れが強い作品、のめり込んでしまう作品は、絶対に忘れられない。
そういう作品に、傑作とか駄作は関係ないんです。

今回の「フェーム」は、初めて鑑賞しましたが、個人的な思い入れがダブってしまった作品。


舞台になるのは、ニューヨークの音楽専門学校。
明日のスターを夢見る、個性豊かな若者たちが
駆け抜ける4年間を、エネルギッシュに描いています。

物語は至ってシンプル。
捻りもドンデン返しもありません。


入学オーディションのシーンから映画はスタートしますが、誰も彼もがユニーク。
芸能界に入りたい人達が集まるんだもの、個性がなければ押し潰されてしまいます。

それでも、「この子、大丈夫かな?」と心配になってしまいそうな子もオーディションには参加していて、芸能界に憧れる人が皆個性的という訳ではないんですね。


結末から話して申し訳ないんですが、本作は専門学校での4年間を描いているので、卒業後誰が成功したとか、スターになったとかいう話はありません。
「コミットメンツ」もそうだけど、華やかな世界とか、煌びやかな日常とは無縁です。
名声を勝ち取る為に、明日どうなるかは分からないけど、自分に才能があるのかどうか分からないけど、がむしゃらに毎日を過ごし、汗を流し、日々レッスンに励む彼らのエネルギー。
若さの特権ですね。

最初は俯瞰で追っていく学校での生徒達の姿は、徐々にそれぞれのキャラクターの物語にフォーカスしていきます。
自分自身に向き合わなければいけない者もいれば、周りから浮いていても、自分の信念を貫き通す者もいます。
みんな得意な分野も違うから、歌もダンスも演技も、全てがダントツに上手い人なんていないから、誰もがどこかで悪戦苦闘します。
そんな中で、新たな自分を発見する人も。

それぞれのキャラクターに降りかかる問題、バックボーン。
必ずしも新鮮な話はないけれど、どれも説得力があります。
しかも、そこに作品の主題やテーマは引きづられない。
悪魔でも、これは専門学校で何を学ぶか、の話。


主演キャストも、ココ役のアイリーン・キャラが名前を聞いたことがあるくらいで、他の俳優さん
はほとんどがこの「フェーム」のみの出演で、表舞台には出ていないようです。それがまたいいんですよね。
学生達が4年間に全てを捧げたように、キャストの多くも「フェーム」に全てを捧げたんですね。
今聞くと驚きますが、まだ無名の頃のトム・クルーズやマドンナ、デミ・ムーアやエミリオ・エステベスもキャストオーディションを受けてたんですって‼︎ブラット・パックムービーの先駆けになったかも知れなかったんですね〜。


素晴らしいのが、街中で学生達が踊り出すシーンなのですが、僕は個人的に学食で即興で始まる
ジャムが大好き。
なんてパワフル。
自分の中に閉じ込めておけない情熱がぶつかり合います。
実際、このシーンもマイケル・ゴアが作曲した16小節のメロディに、キャストが即興で音楽やダンスをつけていったようです。
アラン・パーカー監督はこういった群像劇を、ドキュメンタリータッチで描くのも上手かった‼︎


僕も一時期は俳優になりたくて、演劇の専門学校に通っていた身です。
この作品のように、厳しい入学オーディションはなかったですけどね、学費払えば誰でも入れるような感じ(笑)。
だけどそれまで地味〜な人生を送ってきた僕には「演劇の専門学校ってことは、きっとみんな凄い個性の強い人達が集まるんだろうなぁ」という先入観があって、ここで埋もれちゃダメだ‼︎と、初日からハイテンションで学校に行ったのを思い出しました(笑)。
実際、僕より地味な子もいたんですが。
ホント、演劇の学校と言っても、個性はバラバラ。
僕は運動が駄目でしたけど、タップダンスとかバレエの授業は必須で受けなければならなくて、それが苦痛だったんです。
逆にバレエ一筋でやってきた子とかが演劇のクラスで「別に演技なんて興味ないんですけど」とあからさまに惰性で受講してたり。

本作を見ながら、うわぁ、そのまんまだ、懐かしいなぁ、と妙に感傷に浸ってました。
やっぱり、大勢で同じ目標に向かって進んでいく姿って、胸が熱くなりますね。
素晴らしい青春映画でした。
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