ただのすず

永い言い訳のただのすずのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
3.9
毒気が抜けて浄化されている、眩かった。
西川監督の映画を観るといつも信用されているような不思議な気分になる。押しつけがましい演出、感動を煽ったりしない。観る人に委ねられている、大らかなものを感じる。

今回のラストも拍子抜けするほどあっという間に訪れた。
エンディングロールのピアノ曲を聴きながら泣いた。
大切な人の喪失、心の闇よりも、光の部分。
子供たちと成長していく未来ある過程にすっきりと焦点を絞り映像化されていた、潔い。子供たちと一緒にそこに生きていると思った。素晴らしい配役。
原作を読んだ私は夏ちゃんが登場するたびにめそめそ泣いていたけれど、忘れるわけではないでも死者よりもこれからも生きていく人達を。

劇場で自分よりも年上のマダムに囲まれて鑑賞したのだけれど、幸夫が撮影の途中で引きずられたり、男達があーだこーだと泣いて喧嘩するシーンなど、私は深刻に受け止めたのだけれど、マダムの間ではバカねぇというような笑いが何度も起こっていたのが印象深かった。笑えるシーンでもあったのだ。自分以外の人間がいないとわからないこと、人生は他者である、良い言葉。また観る。