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佐野元春 Film No Damageのtwitwilightsのレビュー・感想・評価

佐野元春 Film No Damage(2013年製作の映画)
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最近観たスコセッシ監督の新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」で、コヨーテという動物の存在が、先住民族を搾取してきた白人側のメタファーとして語られるシーンがある。実際、コヨーテには、同じ肉食動物の獲物を、巧みな戦略で横取りする習性があるらしい。上記映画のエンドロールでも、コヨーテらしき遠吠えが音声として挿入されていた。そんな「コヨーテ」という動物を、アルバム・タイトルにまでしてしまったのが、佐野元春である。

彼が渡米中であった1983年に全国劇場公開されたライヴ・フィルムが、本作「Film No Damage」だ。当時田舎の高校生だった自分には勿論観るすべはなく、途方にくれていた矢先に発売されたのが、本作を編集したVHSヴィデオ「佐野元春 - Truth '80-'84」であった。TV露出も少ない時期、ましてやインターネットも無い時代に、はじめて観た“動く佐野元春”。インタヴュー記事でのクレヴァーでクールな受け答えからは想像もつかぬ、クレイジーで破壊的なパフォーマンス、なによりレコード音源とは異なる野太いシャウトに衝撃を受けた。そう、まさしくそれはコヨーテの咆哮であった。

時は流れ2013年、本作の再上映が決定、公開日に駆け付けたのだが、殆どが前述「Truth '80-'84」で観た映像であり、30年越しに叶った夢ではあったが、正直なところ、大画面ゆえの迫力以外の感動はなかった。
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