MM65

バービーのMM65のネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

全員見た方がいい。全員見て、自分がどう感じたのか、なぜそう感じたのかを内省した方がいい。そこから全てが始まる。


冒頭で母にならねばならない呪縛をぶっ壊しつつ、でも結局この物語が母娘の物語であり、最後子宮に帰るのは、なんにも矛盾していない。女は女であっていい。男も男であっていい。肉体的に、男性器と精巣を持って、女性器と子宮を持って生まれたことを何も否定しなくていい。

その上で、やはり子宮を持つ人間が虐げられてきてしまった歴史は忘れるべきではない。今までの社会の行いは、あくまで女性をオス化させること、つまり男性のステージに女性を「上がらせてあげる」ことを、「配慮」としてきた。トイストーリー4でズボンを履いて強くならざるを得なかったボーのように。(あるいは白人の作った物語を黒人主演でやり直すこともこれに近い) それらは何の解決にもなっていない。もちろんオス化することでしか自分を守れなかった女性がたくさんいたし、いることは紛れもない事実であり、彼女達が切り開いてくれた世界の上にわたしたちは立っている。それは尊重されるべきだが、でもその同じことを繰り返すわけにはいかない。
バービーは最終決戦に、ピンクのミニスカとシャネルのアクセサリーとバッグで臨む。それでいい。それが彼女の彼女たらん格好なら、それでいいのである。

この映画はものすごく微妙なバランスで成り立っていて、ともすれば行き過ぎたフェミニズム、男性嫌悪、男性卑下、女性優位と取られかねないし、そう思う人がいてもしょうがない。でも、そう思ったのなら、なぜそう思ったか?を考えてみた方がいい。こんなにもわかりやすく、言葉で、(暗に示すのではなく、言葉という誰にでも伝わる形で)、名言しないと、伝わらないんだという、監督であるグレタの諦めと覚悟を感じた。あのお母さんの演説、あんなにもはっきりと言葉で女が今どう考えてるか、を、どうして生きづらいのか、を、語ったものはなかった。あそこまではっきり言わないと、分からないのだ。

私たちは自分の見たいようにしかこの世界を知覚できない。だから、映画や、他人が作ったもので、脳みそを進化させ続ける必要がある。不快から逃げるな。
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