めんち

バービーのめんちのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

脚本はかなりうまくできていて、雰囲気を変えるタイミングは早く、それでいて一瞬だけその「裂け目」を出して、また同じ空気に戻す。でも、確実に何かが変わっている。という展開の妙がある。
またテーマ的にも、フェミニズムとか、女性のエンパワメントが前面に出ているけれど、それをただ称揚するでもなく、引いた視線を持っている。
しかしその脚本のうまさを隠すように、かなりコテコテの笑いが入っているので、映画としてシンプルに見やすい。
ある種「バカ映画」としての鑑賞にも耐えうる出来だと思った。

そしてもちろん、メッセージを読み取ろうとして観れば、そこには、wokeであることだけでなく、問いを持ち続け、wakeし続けること=成長すること=老いること(=死ぬこと)について描かれていることが分かるし、それが、変化を過度に恐れていたバービー自身の物語にも繋がるということにも気づくだろう。

個人的には、ケンが「Barbie & Ken」つまり添え物なのだ、と嘆くシーンが良かった。
つまりあれは、大統領夫人みたいなふうに扱われる女性の、バービーランドでの映し絵であり、あの場面に、ケンつまりマッチョな男性たちの現代のやるせなさが表れている。
そんな、実は悩んでいる男性像をも内包してくれた『バービー』は、あらゆる人のためのフェミニズム映画たりうると思った。

ただ、私は字幕版で見たのだが、ところどころ私の拙い英語力で聞き取れた単語が、文字数の関係で訳出されておらず、しかしそれを抜くと伝わらないニュアンスがあるのでは? みたいなところがいくつかあったのが気になった。
あとは、サーシャがバービーに言う「さすが"白人の救世主"ね」のセリフ。
ケンが精神的にマッチョ、ないしマッチョを志向してしまう男性像の象徴として扱われてると知りつつ、ケンは金髪白人だしな、と思ってしまったのは否めない。
つまり、バービーの世界が、白人のための世界という射程を、大統領バービーなどは黒人だったが、果たして乗り越えられたのかという懸念は残った。

とはいえ、よくできた映画であることに違いはないと思う。
宣伝については残念なところがあったことは何度言及しても足りないが、観て損はない映画だと自信をもって言える。
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