回想シーンでご飯3杯いける

アイリッシュマンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.0
実在の凄腕ヒットマンであるフランク“The Irishman”シーランを演じるロバート・デニーロが、アメリカ裏社会における激動の半生を回顧する形で構成されている。

デニーロとアル・パチーノが同じ画面に映っているというだけで何とも感極まる物があるし、今回は抑え目とは言え、彼らがマーティン・スコセッシによるダイナミックな演出の中でドラマを繰り広げる様は、映画好きにとって堪らない。

それにしても、上映時間209分の使い方がイマイチだと感じた。大半は主人公がトラック運転手だった50歳頃から、ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)の片腕として働く60代(辺り?)の話になるのだが、両氏に施されたCGによるアンチエージング処理が何とも気持ち悪く、長時間見ているのが辛い。

総じて感じるのは、本作は'70~'80年代にデニーロや、アル・パチーノ主演によって作られたマフィア映画や、同時代のスコセッシ作品を愛する人達に向けた集大成的な作品であるという事。だからアル・パチーノとデニーロは当時の姿に近い形で描かれている。逆に両氏が近年に出演したヒューマンドラマ系の作品に新たな魅力を感じている僕のような人間には、少々古臭く見えてしまうのだ。

そう言えば、スコセッシが愛するローリングストーンズも今年は旧作の50th アニバーサリー盤をリリースしているし、現代の映画や音楽は'60~'80年代の遺産や続編/リメイクに支えられながら成り立っている側面が非常に強いという事をここでも再認識した。僕は、正直その流れにはあまり賛同できない。2人にはそのキャリアに裏付けられた新しい魅力があるのだから、そこを更に発展させて欲しいと心から願っている。