Ryo

ノクターナル・アニマルズのRyoのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
5.0
オールタイムベスト映画。

ラストのエドワードのリベンジとも取れる行為、そして解釈を観客へ委ねさせるトムフォードの技量とエイミーアダムスの圧巻の演技力が見事でした。

浦沢直樹さんの『モンスター』の最後のような絶妙な良い塩梅の陰鬱感を残したエンドは人々に余韻と考えさせる力を与えさせます。

物語でスーザンがエドワードから離れてしまうのも理解はできる。それは冒頭の肥満の全裸女性がキラキラときらめく細片が降りしきる中、スローモーションで魅惑的に踊る姿からも分かる通り、彼女の芸術的センスは一線を画する。

そんな彼女がエドワードが書く自伝的小説に理解を示すのは至難の業だと思う。

劇中に出てきた、小説の中での赤いソファーと現実の赤い壁紙や赤いソファー、回想シーンでの中絶という赤い血、そしてエドワードが車に乗っているシーンでの赤。

この辺りの差し込み方も素晴らしいし、フィクションが現実を侵食することで、より深くスーザンの記憶に残り、そして最後に後悔の念に襲われるという結末に至るのである。

トムフォードはインタビューにて予定調和にならないことやトーンの一貫性を重視しており、「スタイリスティックに捉えられたイメージが、音楽やサウンドと相まって、世界像を生み出してくれる」と語っており、原作とは少々設定が違うものの、彼なりの解釈で原作を凌駕する勢いの世界観を上手く作り出しています。

また、言葉やセリフはストーリーを前に進めるときにだけ使われるべきで、サイレント上映がベターだと考えているトムフォード。見返した時に、確かに無声でもラインは理解できますが、だからといって芸術だけに終始している映画とは違い安っぽくはなく、難解さも包括しているので(特にラストとか)重厚感と緊張感のある作品を作れるなんて流石だなと感じた。

あと、キューブリックリスペクトが良かった。赤と会議室ね。
Ryo

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