このレビューはネタバレを含みます
昔飛行機の中でも観て
気持ち悪いけどトムフォードの世界観好きだなーなんて淡い記憶しかなかったけれど
内容をかなり忘れていたので再度鑑賞。
まずはビジュアルや世界観が明確であるのが流石トムフォードという感じ。
死体すら美しい。
内容は昔観た時より色々考えさせられた。
ザリガニの鳴くところという映画を直前に観た後のせいか、女性像がかなり対照的と感じた。
ザリガニ〜の主役カイヤは化粧っ気もなくナチュラルだが、目に輝きがある。
幼少期より自分の力で生きて行かねばならず、貧乏ではあるが自分の世界観があり依存的な要素が全くない。精神が自立しているのだ。
自分の人生の人生の舵は自分で握り、
だからこそ常に自分の人生に「覚悟」がある。落ちないように生きるより、精一杯生きる覚悟、また自分の人生の責任を自分でとる覚悟だ。
一方のこの物語のスーザンは
元夫に悲しい目と言われたように目には輝きはなく個性的で高級感のあるメイクは物悲しくすら思える。仕事成功しているので経済的自立はしているし、経営者であることから一見すると強く見えるが
彼女は自分で決めたことすら貫けず、自分の幸せを他人に委ねてしまう。
自分で決めた道なのにそれを正解にするべく動くということができないし、
だめならだめで、自分でバシッと決められないから罪悪感や後悔ばかり。
流されたものに乗っかるだけの人生。
よく考えると仕事も他人のアートを売るという仕事であり、オリジナルの自分ではない。このあたりは社会や親の価値観から逸脱できず、自分の価値観を構築できない思春期の子供のようでもある。
受身なひとというのは必要以上に他責タイプが多い。
自分のビジョンや世界観がないから
進む道が見えておらず、
ただただまわりに不満をぶつけるのだ。
まるで夜の闇のなかの獣のようだ、というのがこの映画のテーマなのかなと思ったりした。