木葉

ノクターナル・アニマルズの木葉のレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.5
幸せの代償は大きかったということか。

20年前に別れた夫から、ノクターナルアニマルズという小説が送られてくる。主人公は地位もお金もない元夫に見切りをつけて、親の理想通りに結婚し、今や富と地位を手に入れてる。
しかし、その小説を手に取ることで、置き去りにして来た過去と向き合うことになる。
なぜ、その小説が今頃になり送られて来たのか、その目的はなんなのか、怖いもの見たさで目が離せなくなる展開だ。

背筋も凍るような衝撃的な小説に、2人のロマンティックな過去、アートスティックだが空虚な現実。
虚構と現実が入り交じるような描き方にギョッとする。

特筆すべきは小説の中で出てくるマイケルシャノンの、眼力、圧倒的存在感。
演出や美術に凝りすぎていて、監督のアートセンスに唸らされる。
でも、このラストは好きじゃない。
劇中劇は、素晴らしかったのに、この終わり方はなんなのかと。
突き刺さる感じがあまりないのだ。
繊細な元夫ジェイクギレンホールが感じたり受け止めてきたこと。
小説を読むことで鈍感な主人公エイミーアダムスが彼の気持ちや体験を味わっているかのよう。
そして知らないうちに誰かを深く傷つけてしまっていたという気付きと確信。
解釈、好みが分かれる映画だ。
失い得たものよりも、得て失ったものは大きすぎる。
人は失ってから、気付いたり、分かることが沢山ある。
鑑賞後、これは復讐劇ではなく、自己懲罰のような監督自身が自分の戒めのために作った映画なのではないかと考えてしまった。
原作を読みたくなった。
木葉

木葉