イトウモ

クイーン・オブ・アース(原題)のイトウモのレビュー・感想・評価

3.7
アレックス・ロス・ペリーをやっと見ることがかなった。そして結構面白かった。

恋人との離別の苦しみを癒しに友人ヴァージニアの別荘に身を寄せるキャサリン。彼女たちが別荘で一週間を過ごすうちに、キャサリンの精神は次第に異常をきたしていき、徐々にその原因が恋人ではなくキャサリンの父親がうつ病で自殺したアーティストであることが明らかにされていく。

こうして話を見るとほとんど「仮面ペルソナ」なのだが、「ミッドサマー」にもプロットがそっくり。こういう悪霊、ベルイマン映画の流行がただアリ・アスターの成功だけでなく、ジャンルとして流行っていることがわかる。アメリカ、病んでるな。「狂う」というのが、酷目にあった人がその原因をさぐることができなくなって、手当たり次第なんでも恨んで仕返しをする状態になっていくことだと順を追って説明してくれるのでよくわかる。

面白かったのは、この女優二人の顔に尽きる。
金髪、碧眼、薄い唇のエリザベス・モスが目玉をぎょろぎょろさせて、小さな口から大きな歯をどろんと見せ、白くて広い額にシワを刻むと不健康そうで不気味に顔が歪む。
一方、口角の上がった大きな口をしたウォーターストーンは、福々とした健康そうな顔だが、髪も瞳も白くコーカソイドにしては塩顔の彼女は、ちょっとした表情で顔全体の印象がかなり変わる。
クロースアップにされたウォーターストーンのくびれた唇が、せわしなく動く様を見ているのはちょっとした幸福でもある。彼女の柔らかい笑いが、目的を達成して最後に笑みを浮かべるモスのきついシワに歪んだ笑顔の口元と対比になっていた。

ソファでおしゃべりしてるシーンに、細部の躍動感が宿るのは、マンブルコア出身の監督の個性だろう。コメディ作家のような、筋肉のファニーな動きを演出する才能がホラーテイストにうまく転換されている。