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大いなる陰謀のarchのレビュー・感想・評価

大いなる陰謀(2007年製作の映画)
2.7
強烈な作品。ここまでエンタメ性を排して政治的主張に徹した作品もない。
9.11から6年後、未だに続くアフガニスタン戦争を背景に三つの場面が展開される。
志願兵として向かった若者のいる戦場、戦争や政府に失望し、俯瞰的に現実を諦めている冷笑主義学生とその学生の才能を信じる教授の対話、そして共和党でネオコンが爆発してる政界のホープとマスコミの対話。

とにかくずっと喋る喋るの連続。その会話内容は現在のアメリカについての話。監督であるロバート・レッドフォードの政治的スタンスからしてこれが共和党批判、新保守主義への批判に満ちた作品ではあるのだが、それをジャーナリスト、教授、政治家、学生、志願兵等、多角的な見地で描いているのがいい、
特にトム・クルーズ演じる政治家とメリル・ストリープ演じるジャーナリストが良い。大義をかざし、悪を仮定し、軍事作戦を正当化する様がトム・クルーズによってある種正当性を帯びていて、めちゃくちゃ説得力がある。メリル・ストリープの視点がなければそういうプロパガンダで終わりそうな勢いである。
トム・クルーズを走らせずに、こうやって「正しそう」の権化的に使うのは上手いと思った。
あそこにはしっかりとした共和党のネオコンとジャーナリストの共犯関係やそれぞれの立場の縮図になっていて上手いと思った。

またロバート・レッドフォード(教授)とアンドリューガーフィールド(生徒)の対話。正直言いたいことやりたいことはよく分からなかったが、演技合戦としてめちゃくちゃいい。ロバート・レッドフォードと過不足なく渡り合えてるアンドリュー凄い。
あの啓蒙的な会話は"君たちはどう生きるか"って感じがしたが、あそこに大人が示すべきこと、若者がこうあるべきというレッドフォードの考えが詰まっているように思う。

全くもって楽しい作品ではないのは確か。
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