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大いなる陰謀のtakのレビュー・感想・評価

大いなる陰謀(2007年製作の映画)
3.0
この映画が公開された2008年はアメリカ大統領選挙の年。イラクやアフガンでの米軍の活動・戦闘が長期化していることは、ブッシュ政権が浴びている批判の一つだ。この映画は、戦争という行為によって若く尊い命が今現在も失われている事実を突きつける。

ロバート・レッドフォードは大学教授として、優秀で正義感に満ちた学生が志願したことを憂い、怠け癖のある学生を叱咤する。メリル・ストリープはジャーナリストとして、政治に利用されることなく、何が真実で、何が問題なのかをペンで伝えたいと考えている。トム・クルーズは若手共和党上院議員で、アフガンで進行されるある作戦を通じて事態解決を目論む。だが、そこには野心が見え見え。スクリーンには三者三様の正義感が示される。

監督はロバート・レッドフォード自身が務めているが、今こうした政治的なドラマを手がけようとしたのは、現在のアメリカを憂えてのこと。教授の台詞としてこの映画の原題「Lions For Lambs」の意味が語られる。
かつてドイツ兵が勇敢なイギリス兵を称えて詩を贈った。
「このように愚鈍な羊たちに率いられた勇敢なライオンたちを、私はほかに見たことがない。」
戦場で多くの若者が犠牲となっていることを、為政者たちが軽んずるような現状に対するメッセージなのだろう。劇中でも、アフガンでの作戦はトム・クルーズ扮する議員が意図した通りには運ばず、勇敢な若者が犠牲となってしまう。

そして映画は、対テロ戦争という現実に対して我々に何ができるのか、を突きつける。日本人が感ずるところと、米国人が感ずることは違う。しかし、世界で起きている紛争やテロを他人事のように考えてはいけない、と思うことは共通だと思うのだ。この映画を見たアメリカの若者は、11月の選挙で民主党か共和党か、どっちに投票したのだろう。それもひとつの大切なアクション。

にしても「大いなる陰謀」って邦題の意味がまったくわからん。
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