Solaris8

カノンのSolaris8のレビュー・感想・評価

カノン(2016年製作の映画)
4.0
映画の撮影場所が富山県の黒部市で、自分の故郷が舞台の映画になる。2016/10/1の上映初日に富山で観た。

一見幸せそうに見える三姉妹だが、東京で夫のモラルハラスメントに悩む長女、黒部の小学校教師で結婚への不安に悩む次女、金沢の料亭の若女将の修業に悩む三女、それぞれの日常生活に悩みを抱える三姉妹が、亡くなった祖母の葬儀に集まる。祖母の遺言で、死んだと聴いた母が、アルコール依存が原因で認知症を病みながらも生きている事を知る。

カノンの楽曲は三重奏で追走曲として有名だが、三姉妹が母の過去を追いかける事により、母の子供達への愛が明らかになり、そのエピソードの積み重ねが、母へのわだかまりをほぐしていく。目の前の霧が晴れた事で、遠くに在った三姉妹自身の悩みにも踏み込んでいく。

料亭の女将で気丈な祖母と料亭の若女将に成れなかった母との葛藤を二人の女優が熱演している。逃げるように金沢から黒部に流れてきた母が懸命に生きようとする姿と黒部の寂れた街並みが良く似合っていた。認知症になった母が清掃婦の格好をしていて、それには訳が在ったのだが、シナリオも良かった。

人の心を通して見る景色を情景というが、生地の街を車で流す場面や伸びやかな景色の黒部牧場の場面は、自分にとって情景である。自分の母は腎臓病から認知症気味で亡くなって、地元が舞台の映画として思い入れも有り、映画が中国金鶏百花映画祭で受賞し嬉しかった。
Solaris8

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