このレビューはネタバレを含みます
マクナイーマが黒人の間はずっと面白くてずっと口角上がってたと思う。へんてこりんな自然の暮らしを捨て都市へと旅立つマクナイーマは黒から白へと生まれ変わり、それまでの間の抜けたおとぎ話からゴダールのような血みどろの社会風刺へと様変わり。マクナイーマと革命戦士シーの愛の部屋にはアトミックボムのパネルが飾られ、遠くに見える工場はアメリカ製の中古だと自慢するのは人食い成り金。なんやかんやでその人食いをやっつけた英雄マクナイーマの真の姿は、魔法と奇跡により変身した愚かで無精、好色で欲深という凡人。食べ物を分けることはせず、腹いせに子供から金を巻き上げ、玉を潰しても性欲は旺盛、腹いせにアリを弄ぶ。物語の終わり、夢から覚めたようなマクナイーマはただ一人残され、彼の勇ましい英雄譚の聞き手はオウムだけ。色に溺れ死んだような最期も英雄そのものを揶揄している…いや、ガンディルだろうか、骨までしゃぶり尽くされたってことかな?もしそうなら、泉の奇跡は容姿だけで人格は変わらないし、昔魚は人間だった…キリストのシンボルに英雄は殺されたという宗教批判でもある?生まれて死ぬを繰り返す、始めと終わりの音楽によるこの物語のループ構造は何から何まで皮肉っぽくもあり人間讃歌のようでもあった。街を歩く手持ちカメラでのゲリラ的な撮影はドキュメンタリーを演出し、立体駐車場の昇降機や豆と肉のスープは最高にクールだった。