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レディ・バードのKUBOのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
3.8
よくある邦画の青春ものと比較して、主人公に何か特別なことがあるわけでも、大事件が起きるわけでもない。アメリカ西海岸の田舎町に住む女子高生の日常を描いているだけなのだが、それがおもしろい!

主人公のクリスティーンは田舎町のサクラメントが大嫌い。自分に「レディ・バード」という別の名前をつけて、いつかニューヨークに行くことを夢見る、かなりイタい女子高生。

ちょっと背伸びをして、イケてる彼氏を作りたい、キスをしたい、セックスをしてみたい。その「背伸びをしてる感」が誰にでも覚えのあるイタさで、見るものの共感を呼ぶのだ。

この作品で何より素晴らしいのは、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされたシアーシャ・ローナンの演技だ! 本当に自然で、そこに生きている「レディ・バード」をリアルに感じさせてくれた。彼女なくしてこの作品はない。

他にも彼氏役に「君の名前で僕を呼んで」でブレイクしたティモシー・シャラメ、親友役のぽっちゃりさん ビーニー・フェルドスタインがよかったな〜。

このサクラメントという町は、下手をしたら日本よりも感覚的にカタイのかもしれない。地域的なカソリック色の強さから来ることのようだが、学校で中絶反対の講演会が行われたり、婚前交渉をしたから家から追い出される⁉︎とか、今どき「婚前交渉」! 言葉すら死語(^^)。ゲイだなんて知れたらご近所の目で生きていけなくなるほど。

だからこそ、都市部の進み過ぎちゃってるアメリカの現状とは異なり、アメリカでは「ダサっ! あり得ない!」って笑われるところあたりが、日本では日本の高校生の実情と重なって逆にリアルに感じられちゃったりするんだろうな。

徹底的にダサく描かれるサクラメント。買い物はいつもの大型スーパー。友だちの家に飾られてるレーガン大統領の肖像画に「これってジョーク?」って返してみるも全然マジだったりする。

それでも、本作は監督グレタ・ガーウィグの地元サクラメントへのラブレター。離れてみてわかったという地元への思いが本作を作ろうとした動機だと言う。

渋谷で生まれ育った私には、田舎町に住んでいる閉塞感というものは真の意味ではわからないかもしれない。だが、ホームタウンがあることへの羨ましさを、感じることも確かだ。

ずっと「レディ・バード」と呼ばれたがっていた彼女が、「私はクリスティン」と言うシーンでグッときた。
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