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シンデレラ 前編のNMのレビュー・感想・評価

シンデレラ 前編(2011年製作の映画)
3.9
現代版(よりは一昔前の古き良き時代)のシンデレラ。舞台はイタリア。
誰もが知る物語をリメイクして飽きさせず最後まで観せるのは至難の業。まずはその挑戦を称えたい。
完全に原作を離れることなく、忘れたころに要所要所でシンデレラ要素が挟まれている。
長いだけあって深く作品に入り込める。

映像も音楽も綺麗でロマンチック。ぜひなるべく良い環境で観たいところ。

本作のヒロイン・オーロラは、
本来のシンデレラと違って、舞踏会に出ることより音楽に身を捧げピアニストの道を進むことが夢。
お嫁さんになるだけが女性の目標だった時代とは少し異なる設定になっている。
それに、着飾って自分を美しく見せるより、ありのままで勝負する現代の価値観が取り込まれている。

年頃になるとオーロラはますます美人に成長。
不遇に甘んじる時代も、メイドや料理長、近所の子供たちなど、気立ての良いオーロラを慕う人たちがいるので救われる。それはまるで一つの家族のよう。
毎日泣いて過ごしたシンデレラと違い、オーロラはメンタルが強く機転も利き、辛い環境の中うまく自分の意志で行動している。

一方王子様のほうも、ある意味で自分を捨て、苦難の時を過ごしてきた。しかしどちらかというと彼よりオーロラの方が強く生きているように見えた。彼は自分の夢を諦めてしまい、結婚も半ば投げやりで、突如現れた仮面美女にも心を奪われ、いつまで経っても正体に気づかない。いざという時行動を起こすのもオーロラのほうで頼もしい。

仮面を被ったオーロラはがらっと性格が変わるが、本来はこちらのほうが自然な彼女の姿のように思った。
この夜からオーロラは本来の自分に近くなっていく。オーロラはともかく、王子様のほうは本当に見合った男性なのか、真実を見抜けない人なのではないか、という疑いがずっとあったが、そんなありのままの自分を見せられる彼はやはり彼女にとって運命の人なのかもしれない。
演奏会では、今まで黙ってきたことをこの時はすんなり告白している。

そして急に現れるのは、魔女ではなくアメリカから来た富豪の女性。
恋愛のほかに、本作でのもう一つのテーマとなる重要な関係性。

本作のオーロラには恋敵がいるが、本作では「靴」が意外な活躍をしてくれる。

オーロラが全編に渡って何度も弾く曲は、気持ちに合わせて、ある時はゆったりと、ある時は苛立って弾かれ、演出が細かい。

登場人物はみんなキャラクターが立っていて、そのままアニメ化できそう。ライバル役たちもどこか憎み切れない。

ルチアやティナが甲高い声なのに対してオーロラは低い声なのが印象的。やはい欧米では低い声の方が知的なイメージを持つのだと感じる。特にティナは十分チャーミングだし賢いが、その声だけでどことなくオーロラには劣る女性なのだという印象を持たせる。感情的で忍耐力がなさそうなイメージ。

もう何度映画に使われたか知らないが、やはりイタリアの石畳をスクーターで走るシーンは良い。
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