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ブルーに生まれついてのtoshiのレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
4.5
ジャズトランぺッター、チェット・ベイカーの伝記作品。予告編でイーサン・ホークの切ない表情が既にハマり役である事を感じずにはいられない作品で、音楽が土台にありながらも静かでとても切ない内容でございました。


かの有名なジャズミュージシャン、チャーリー・パーカーにも認められ華やかな活動を行っていたチェットが、ドラッグにおぼれ過去の栄光など見る影もないどん底状態から始まる本作。栄光、挫折、ドラッグ、女、音楽等々、私の好きなキーワードが盛りだくさんでございます。


97分と程よい尺ではありますが、内容から中だるみするかと思いきや、イーサン・ホークの演技力が退屈にはさせてくれません。特に彼の歌声はチェット・ベイカーそのものとも言ってよい程切なくとも美声で、演技のふり幅の広さに驚かされます。


チェットがどん底から這い上がる為、生活保護を受けたりドラッグから足を洗いクリーンとなる為に鎮痛剤メタドンを飲み続け苦痛の日々を耐えられたのは、女優ジェーンの存在でした。彼女無しではチェットは見事復活するに至るまで回復することはなかったでしょう。


チェットが徐々にクリーンになり、演奏にたいしても昔の自分を取り戻していき、見放した人達が彼の元へ戻ってきますが、やはりドラッグの魅力を彼に伝え甘い誘いで言い寄ってくる者もいます。それでもチェットは我慢しクリーンであり続けます。が、終始手放さない煙草とメタドンは彼がまだ不安定な状態である事を思わせます。


完全復活のチャンスを得る機会をもらったチェットは、その完全復活の為には何かを失う事を覚悟して舞台に上がります。そして得たものとは何か、失ったものは何なのか・・・。


チェット・ベイカーは正にジャズトランぺッターというミュージシャンであった事を悟る切なくて儚い作品でございました。
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