うえの

ルームのうえののレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.2
19歳の頃から実に7年間「部屋」に監禁されていた母のジョイとその息子、5歳のジャックの「部屋」からの脱出とその後を描いた作品。

オールドニックという人物に監禁され、望んでいない妊娠ながらも授かったジャックという宝を必死に守ろうとするジョイ。
母とずっと一緒にいることのできる「部屋」が「世界」ではないことを唐突に告げられ、受け入れられずに反発するも、母の願いを叶えるために怯えながら脱出計画に臨むジャック。
見事脱出に成功した2人に待っていた本当の「世界」とは?

冒頭の幸せそうな2人の様子とは裏腹にどこか絶望的な雰囲気に息が詰まる作品。
「部屋」を出るまでの過程を感動的に描いた作品と思っていたが、違った。脱出したあとめでたしめでたしで終わらせずに、2人の心情の変化を周囲の人間とともに描いた点が非常に素晴らしかった。

「世界」だと思っていた「部屋」から半ば強制的に追い出されたような形で新しい「世界」に触れたジャック。この時のジャックの視点がピントが合わなかったり、光が目に強すぎたりと初めての「世界」であることを強調していた点と散歩していたおじさんの優しさと女性警官の勘の良さが非常に良かったこちらがお礼を言いたい笑。

母とオールドニック以外の初めての人間に驚き、急に現れた祖父と祖母にすら挨拶もできない怯えよう。
そのジャックが少しずつ心を開いていく様子に感動する。
血の繋がりのないレオにも懐くようになったり、近所の人と話すことができるようになったりと自然の変化に見えるが、ジャックにとっては大きな変化。
バァバ大好きと言ったシーンで自然と涙がこぼれた。初めてですこんなの笑。

ジャックが新しい「世界」に適応して行く一方で、「世界」に戻ってきたジョイは徐々に7年の月日の経過を感じ始め、後悔と怒りでやりきれない気持ちに困惑する。
世論の勝手な想像を払拭するためにテレビに出演したり、気持ちを落ち着かせるために薬剤に頼り、昏睡状態に陥ったりと不安定なジョイを支える祖母たち家族やジャックの存在。
守ると心に誓っていたジャックに実は支えられていたんだと気付き、ジャックと向かい合うジョイの姿も涙ぐましかった。

最後に再び「部屋」を訪れるシーン。たとえ5年間監禁されていた空間であっても、ジャックにとっては「世界」であり、その「世界」に別れを告げたあのシーンで2人が前に進もうとしていることを示していると感じる綺麗な終わり方だった。

ジャック演じるジェイコブトレンブレイ本当に素晴らしかった女の子に見間違うほどの容姿だけでなく、「世界」を見たことのない少年という難しい役柄をこんなにも表現できるかと驚かされた。
主演のブリーラーソンだけでなく、彼もオスカー受賞してもいいと思える演技力だった。
順調に成長していってくれることを期待しています!
うえの

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