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マダム・フローレンス! 夢見るふたりのskm818のレビュー・感想・評価

3.8
さすがメリル・ストリープ、上手い。もちろん音痴の歌姫なんだが、そこまで不快な感じではない。これは映画だからある程度耳触りを調節してるのだろうかと思ったが、最後の方で流れる本人の歌も、言うほどひどくない。もちろん高く上がるべきところで下がったりして、ひどいっちゃーひどいんだが、声自体は悪くないし、これよりひどい歌手なんて日本の歌番組にはいくらでも出ているような。米国のようなショービジネスに厳しいところだからこそ、憤慨して席を立ち酷評する評論家も出てくるし、下手だということが逆に面白がられて評判になったりもするのだろう。どう見ても素人な金持ちマダムの道楽だろっていうリサイタルにまでプロの批評家が来て一般紙の紙面で本気で酷評しちゃうっていう文化風土自体がすごいかも。少なくともおいらには、何がおかしいのかさっぱりわからない。
マダムの歌が評判になったというのは、カーネギーホールでの公演の件が口コミで伝わってなのか?と思っていたんだが、違った。流出したプライベート録音盤を聴いた人が面白がって、笑えるということで評判になっている。それはマダムの望む方向での人気とは違うんだけど、戦時中のその時期、心から笑えるというのは大事なことだったのだと思うし、それで慰められた人、癒された人も大勢いると思うんだよな。だからこそ今でも人気なのでは? 音痴でも一所懸命歌う姿も何らかの感銘を与えていたのかも。評論家的な視線で素晴らしいものだけが音楽か?って話だ。
シンクレアの愛人の女は実際にいたから出ているのだろうが、映画上はそこまで必要だとは思えないなあ。少なくともレベッカ・ファーガソンである必要は?
マクムーンさんはゲイかな? クラシックピアニストとして野心があるとか言ってるが、成功するクラシックピアニストはそもそもステーキハウスで弾いてないってばよ。彼も音楽家の端くれとしてマダムの歌はうわあと思っていたんだろうけど、マダムの人間性はさー、愛さずにはいられないじゃないか。あの実業家とその妻も、シンクレアの友人たちも、やっぱマダムのこと好きだったんだわな。実業家の蓮っ葉な若い妻が野次る海兵隊員たちを叱りつけ、それを実業家が褒める場面よかった。心温まる話だ。
そしてだからこそ、マダムに梅毒を移した最初の夫は許しがたい。
それにしても金の力すごいなあ。みんなそんな簡単に買収されちゃっていいのか笑。
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