このレビューはネタバレを含みます
「生き物はな 生きていることが全てよ 生きていることが全てだからこそ大きいも小さいも関係ねえんだ それを誰かが 何かの目的の為命をかけ始めたらどうなる? オレたちはその内何か目的がないと生きられねえバカな生き物になっちまうだろうよ」
「目的の為に生きるヤツはな イヤでもガマン強くなるもんさ そういう奴がこの森に一匹でも現れたら 他の生き物はどうあがいてもそいつには勝てねえよ そいつは死ぬまでまいったとは言わねえんだからな」
なぜ命をかけたりしてはいけないんだ、とのスナドリネコさんの問いに対してこう返すヒグマの大将、原作の漫画においてその大将を襲撃したヒグマのカシラの子分が命をかけると軽口を叩いた際に親分であるカシラが命をかけなきゃ何もできない様な野郎に一体何ができると殴り飛ばし、スナドリネコさんにオイラは命をかけたりかけさせたりしねえと啖呵を切る場面があった。それらを踏まえるとこの時のスナドリネコさんの問いは原作から地続きのいがらし先生にとっての命題のひとつであり、大将が自分の家族の元に戻ってタイショーくんを抱くシーンもまたスナドリネコの様な相手がもしまた現れたとして、自分は妻と子供の生きる森の暮らしを大事にしたいと思うが故に彼らのそばにいて体を張る事を選んだという事なのか、また或いはそんな目的や理由なんてもんがなかろうが、そういう身内を理屈にならない様な理屈で平気で殴るアライグマくんのお父さんの生き方から何かを汲み取ろうとした結果なのか複数の理由を考えさせられる結末だった。