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チリの闘いのmhのレビュー・感想・評価

チリの闘い(1978年製作の映画)
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チリ・クーデターについてのドキュメンタリー巨編。
個人的2500本目の記念なので、三部構成263分とめちゃ長いのに挑戦。
この映画では社会主義が正義。アジェンデ大統領の追悼だったり、アメリカがしたことを告発する意味もあったりと、そういった趣旨もあることにだんだん気がつく。
資本主義的な映画に毒されているわれわれは、そのスタンスを把握するのに少しかかるので、概要くらいは踏まえておいたほうがいいと思った。
流れ的には、

保守票が別れた(中道左派のキリスト教民主党、右派の国民党)ため、左派である人民連合(社会主義政党の統一戦線)が政権与党となる。世界初の選挙で選ばれた社会主義国家として国際社会から注目を集める。

南米が左よりになってきそうなことを危惧するアメリカがCIAと金を投入。貿易を邪魔したり、トラック業界のストを支援したりとド派手に引っかき回す。

それに市民が反発。キリスト教民主党も加わって、市民が率先して経済活動を回す理想的な社会主義が実現する。

アメリカ主導のクーデターでアジェンダ大統領が死んですべてが終わる。

これらを第一部と第二部で終えて、第三部はおさらいみたいな構成。
16ミリで撮影されたため細密であるとは言いがたいんだけど、全体を貫く熱量がすごかった。
第一部の序盤。でっかいマイクをぶったたいてからインタビューをはじめるという、カチンコ(は画と音をシンクロさせるために必要な道具なのだがそれ)がないことを逆手に取った個性的なやり方も作風の醸成に一役買ってる。
アジテーションの最中は口を挟まず静かに耳を傾ける。ときに長くなるけど、感動的な意見には惜しげもなく拍手を送るというチリのひとたちには好感しかなかった。
第三部終盤の、うまく回り始めた原始的な社会主義は、その様子をみているだけのこちらも幸せになってくるような理想的な社会。
その後どうなるかは、第二部でもうやったので割愛されてる。
大統領官邸(モネダ宮殿)が燃えているシーンは、ほかの国の、ほかの時代のことなのに、胸が潰されるような思いだった。
政治的に偏らないように慎重に作られた映画なので、明確なアメリカdisはないんだけど、これはどう考えてもアメリカが悪い。ひとんちでクーデターするとかあり得ない。時代的にはベトナム戦争もやってる頃で、ほんとうにひどい。
そういう時代だからと片付けるしかないのかもしれないけど、その被害を国家レベルで受けてしまったチリのような国もあるのだった。(ベトナムとかカンボジアもそうだけど)
「炎628」に次ぐ高評価に期待したけど、そこまでのものではなかったかな。めちゃくちゃ面白いことに間違いないんだけど。
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