俺、この映画を観る前に心配していたことがあります……それは、この映画を観ることで、自分が少しでもヒトラーに好感を持ってしまわないか?ってことです。
ヒトラーと言えば、ナチス・ドイツの独裁者。有色人種やユダヤ人の迫害、ホロコースト。障害者へのT4等々…とにかく、とにかく、絶対的な悪!悪!悪い奴!!
ということは、重々承知していたのですが、嫌な予感的中!
内容は、現代のドイツにタイムスリップしたヒトラーが起こす、ドタバタ・スラップスティックコメディ!なんだけど…その描かれ方が、非常にマズい。
単純に、ヒトラーがカッコいいです…(汗)。すっごい、おしゃれだし…(大汗);^_^A
まるで、現代人が失ってしまった確固たる信念を持っている、一本筋が通った男として描かれているのですよ…。
これは、ダメだ良くない…とは分かっていても、ヒトラーがとても魅力的なんですよ…。
映画自体の完成度が高いだけに、非常に厄介です…。
劇中の人々は、現代に甦ったヒトラーを、もちろん本人とは気付かずに、ソックリさんの俳優か芸人さんだと思って接している、という体裁で扱われているのですが、その人々の反応もマズい。
確かに、ヒトラーに対して中指を立てたり、激しい拒否反応を示す人物達もほんの数人は出てきますが、おおよそ95%位の人々は好意的なんです。
本物のヒトラーだと思っていない、という体裁で誤魔化しているつもりかもしれないけど、このバランスはマズいだろ⁉︎
でもって、キャッチコピーの様に何回も劇中で繰り返されるセリフが、「悪いことばかりじゃなかった。」ですよ⁉︎
原作者のコメントも読んだけど、ヒトラーを単に悪の怪物として描くのではなく、チャーミングで礼儀正しく柔軟性のある"リアルなヒトラー"を小説で描きたかった。って…この人は、何を言っているんだ⁉︎
この映画で表現されているのは、その原作者が言っている良いトコだけ取り上げて、ヒトラーが行なった、数え切れない悪の限りを全く表現していないじゃないか!!
ズルイっていうか、卑怯っていうか、ヒトラー擁護だろ、これ。
俺は「シンドラーのリスト」や、「戦場のピアニスト」、「ソフィーの選択」、「愛を読むひと」、「アンネの日記」、「サウルの息子」、「夜と霧」等々、数々の映画をちゃんと覚えてる。
ヒトラー、お前が悪魔だってこと、忘れてなんかいないぜ。こんな映画で誤魔化されてたまるか!
でも、この映画、間違いなく出来が良いのです…。困ったな。