これは期待をはるかに上回るおもしろさだった。現代にヒトラーがタイムスリップしたら…というお話なんだけど、ドキュメンタリーとフィクションが絶妙に織り混ざってて、どこからが事実なのかわからない怖さ。
最初は「頭のおかしなヤツが現れた」と面白がっていた民衆だけど、次第に「TVヒトラー」に心を掴まれ、いつしか彼の虜になっていく。
観ていて、最初はコメディータッチの描写に笑っていたのに、ヒトラーのふと見せる人間性や、周りからの翻弄され方を哀れに思ってしまったり、いつしか彼に感情移入している自分がいることに薄気味悪さを感じた。
今はSNSでいとも簡単に情報拡散できるし、自分の考えを公にすることができる。だけど使い方を一歩間違えると、物凄く偏った方向に世界を変える力を持っている、物凄く危うい手段だとも思う。
ヒトラーが悪魔のように人を操っていたんじゃなく、周りがいつしかそのように流されていた。今も充分にあり得る、というかすでに起こっている現実。ちゃんと物事を判断する冷静な頭を持とうと切実に思うと同時に、こんなに簡単に扇動されていく人間の心（自分も含め）がただただ怖い。
