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パーティで女の子に話しかけるにはのkanaco4月末までお休み中のレビュー・感想・評価

3.5
パンク×トランス+人間×宇宙人で描く超個性的な青春物語。恋愛成就までのストーリーではなく、恋する事で若者たち自身が強くなり、他者の心も揺さぶるような影響力を持つまでに成長するタイプ。ヒロインの宇宙人女子ザンが可愛い過ぎ。キャラクターと設定がクセ強すぎてけっこう置いていかれてしまう(140字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

パンクに傾倒する内気な少年エンは、偶然もぐりこんだパーティーで出会った風変りな少女ザンと恋に落ちる。ところが彼女の正体はなんと宇宙人。個を尊重すると言いながら実態は保守的で規律の厳しいザンの仲間たちに、2人は反発しながらも恋を育むが…みたいな話。パンク×トランス+人間×宇宙人で描く超個性的な青春物語。

タイトルとポスター絵しか情報を持っていなかったので、てっきりボーイミーツガールから始まる愛一本の超王道ラブストーリーだと思ったら、全然そんなことはなかった。恋愛の成就までのストーリーというよりは、恋することによって若者たち自身が強なり、他者の心も揺さぶるような影響力を持つまでに成長するという青春映画。クラブでいかに上手に女の子をナンパするかの方法を伝授してくれる映画じゃなかった(笑)

ジャンルとして一番近いなと思ったのは「シングストリート 未来へのうた」。あちらはUKロックに傾倒する若者が恋をすることで強くなり、家族・友人・趣味など自分の環境に対してきちんと向きあい前に進んでいくという、心に静かに熱く響く青春ストーリーだった。方向性的には本作も同じような感じ。

ただし、こちらの音楽は「人間の若者たちの鬱憤を叫ぶようなパンクロック」と「奇抜すぎる宇宙人たちの共同体を強調するようなトランス音楽」で、家族問題は宇宙人共同体の体制問題。つまり、ザンとエンは残酷な宇宙人の思想や体制を打破するために、自分たちが気持ちの変化を起こすだけでなく、パンク仲間や宇宙人たちの気持ちを揺り動かさなければならない。内面的な恋愛からの成長だけで終われない、停滞して終わりを迎えようとする宇宙人に「進化か絶滅か」を迫るお話になっている。

ヒロインの宇宙人女子、ザンがあまりにも可愛い。こんなヘンテコでキュートな女子に好意を寄せられたら誰だって好きになってしまうよ。

正直、キャラクターと設定が独特すぎて、置いていかれることは多々ある。頭にクエスチョンマークが乱立。映画の大事なメッセージが分かったような気になりつつ、実は何にも分からないみたいな、なんとも曖昧な気分させられるクセ強映画だったから、凄く面白かったかと言われれば、「良く分からない映画だった…」としか言えない。すごくシュール。でも、ラストの余韻がとても良かったので(よく分からないのに)鑑賞後のスッキリ感は良き(笑)終わり良ければ総て良し!かな。

それにしても、イギリスの空が本当にずっとドンより。恋愛映画なのに「仄暗い水の底から」を思い出すような曇り空だった。