教授

パーティで女の子に話しかけるにはの教授のレビュー・感想・評価

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若い世代から、僕の世代、あるいは僕自身の感想を聞いてみたいということで本作を薦められての鑑賞。
少し、挑まれている感じもありつつ。
割と素直に良い作品だと感じた。

セックス・ピストルズ、ダムド、クラッシュなどのロンドンのパンク・ムーヴメントの只中の、パンク少年の青春恋愛映画。
本作にはそこに、ツイストとしての「SF設定」が入り込み、一風変わった感触の映画になっている。

イギリスから見えた「異文化」としての勃興しているカルチャーギャップ(のようなもの)を想起させるヒッピー・ムーヴメントとパンク・ムーヴメントの「似て非なる」差異の中で「住む世界の違う」男女の恋愛が描かれる。
その王道の青春映画的な物語に、恋人が「宇宙人」という設定のみならず、この宇宙人たちのライフスタイルが、独特でもあり、現実世界での「社会背景」と重なったり重ならなかったりのバランスがよく計算されている。

ある意味で突飛な設定と、斬新な「宇宙人描写」のサプライズと、青春映画としてのバランスが上手く溶け合っているかは疑問もあるが、それでも普遍的な青春映画としてのディテールは上手く構成されているので安心して観ることができる。

特に終盤のパンクスたちの殴り込みのシーンの普遍的に盛り上がる展開に、そこから旧体制と新秩序の議論、世代間の価値観の相違を英国的な議論の形で表す展開は面白かった。
そして、これだけ不可思議でシュールな、先の読めない展開の物語を纏めるラストの決着などは構成の緻密さ、物語の展開のさせ方は見事な作品。

主人公のエン(アレックス・シャープ)とザン(エル・ファニング)ビターな別れの展開もあっさりと描写されるスマートもそうだが、かなり終盤までエン達にとっては「カルト教団の集団自殺」と捉えられたように、宇宙人たちの帰還もそのように印象付けられるような多層な解釈が成立するようなSF的目配せも一応には取り入れられている。

それらのイディオムやディティールが過剰過ぎず、あくまでエンとザンのラブストーリーを邪魔しない程度に入れ込まれているところはとても好感が持てる。

ただ、どことなく残念に感じるのは、何度か繰り返されるデートシーンの「スローモーション」の雑さ、とってつけた感は、単純に映像処理としてもダサいと感じる。

個人的には、もう恐らく「パンクロック」という表現に、自分の10代から20代の頃のように熱狂することはないのだろうな、という感傷と、それでも「あの頃」なんだかんだと、ああいった熱狂に踊り狂っていたなぁと懐かしい感じがした。
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