風の旅人

パーティで女の子に話しかけるにはの風の旅人のレビュー・感想・評価

3.5
パンク好きの童貞少年エン(アレックス・シャープ)は、仲間とライブハウスの打ち上げ会場を探している内に、郊外の売家から流れてくる音楽に誘われ、奇妙なボディスーツを着込んだ集団のパーティに紛れ込む。
そこでエンは美しい美少女ザン(エル・ファニング)と出逢う。
パンクの話で盛り上がった二人は、たちまち恋に落ちる。
しかしザンは宇宙人で、48時間後に自分の星へ帰らなければならないのだった。

ストーリーはいわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」で、エンとザンがいっしょに時を過ごすことで精神的に成長していく様が描かれる。
変わっているのは、ザンが宇宙人だということ。
しかし童貞にとって異性は宇宙人みたいなものなのだから、この設定は驚くに値しない。
むしろわかりやすい。
それにしてもザンを演じたエル・ファニングは「絶世の美女」というわけではないが、開花する前の蕾のような美しさがある。
どこかあどけなさの残る表情、イノセントな色気。
童貞はああいう女の子に弱い。
エンの童貞性を象徴する『パーティで女の子に話しかけるには』というタイトルは秀逸だと思う(それは童貞にとって難問である)。

作中で宇宙人は自分たちを「旅人」ではなく、「観光客」だと言う。
では「旅人」と「観光客」の違いは何だろうか?
「旅人」は戻る場所を持たない孤独な存在であり、何者にも束縛されず、自由に振る舞う。
対して「観光客」は戻る場所を持ち、束の間別の土地を訪れるが、やがて自分の所属する集団に帰って行く。
この映画が感動的なのは、「観光客」であるザンにエンの「パンク精神」が感染し、一つの社会集団の考えを変えてしまうところにある。
人は常に「旅人」であることは難しい。
しかし「観光客」として、他者の文化に触れ、それを持ち帰ることはできるだろう。
風の旅人

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