髙橋佑弥

JUNUNの髙橋佑弥のレビュー・感想・評価

JUNUN(2015年製作の映画)
4.0
「この映画はシャイ・ベン・ツールとジョニー・グリーンウッドによるコラボレーション作品「ジュヌン」の録音風景を映像化したものです」の字幕で始まる、PTAによる2015年製作/54分の音楽ドキュメンタリー。
本作では数多の曲がとどまることなく全編演奏され続けるが、ひとつも歌詞が出ないことに意味がある。彼らが何を歌っているのかはわからない。時折ピント外れる被写体たち、端正とはいえぬドローン&手持ちデジタル撮影、円形座りの演奏者を反時計回りのパンで捉える圧巻の開幕…すべて"ケミストリー"を捉えるために奉仕する。コントロール欲求に背を向けた、従来と違うPTA。"『インヒア…』以降"感濃厚──メインの出来事=被写体とは別に、その背後で関係のない出来事=人物が無数に起こっている様子が写っている状態の混沌/豊穣さについて、『インヒアレント・ヴァイス』の際に『フライング,コップ/知能指数0分署』を引き合いに出して、ピンチョンについて語っていた──な傑作。

PTAはたびたびジョナサン・デミからの影響を口にしているけれど、その"影響"というのはアルトマンから受けたような系統のものではなくて、いまやキャリア設計的な面に向けられているような気がする。長編劇映画ばかりでなく、MV仕事&メイキング映像仕事についても語られるべき。

2020/07/24
髙橋佑弥

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