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ジョン・F・ドノヴァンの死と生のJTのレビュー・感想・評価

4.1
孤独で壊れてしまうのは人間だけ
孤独を共有できるのは私たちだけ

2020 . 03
『The Death and Life of John F. Donovan』

待望のドランによる新作で今作は初の全編英語映画
ハリウッド色がやや感じるものの、映像といい、音楽といい、紛れもなくグザヴィエ・ドランの作品でした

人気俳優と普通の少年の変わらぬ孤独についての話
急死した大人気俳優ジョン・F・ドノヴァンは彼に憧れる11歳の少年ルパートと秘密裏に文通をしていて、二人とも似た境遇から手紙で心の内を明かしていた

人の孤独や本心を知ることは決して容易なことでなく
自分の孤独や本心を伝えることはもっと辛く、苦しい
でも映画や音楽はいつでも孤独に触れさせてくれてドランの映画は必要な感情を自然に引き起こしてくれる
いつもの近接撮影で登場人物たちの顔に極限まで近づけて、表情の変化をひとつも見逃さずにとらえる
ここにグザヴィエ・ドランの人間性が強く滲んでいた
視線の動き、唇の震え、頬の色、揺れる表情に溢れる想いをこぼさない、その素直な美しさが心を掴む
逆を言えば、それほど近づかないと本心はわからない
ちゃんと近くで見てくれないと、本心は曝けだせない
母と息子の間でさえ完全に分かり合うことはできないけれど、立ち止まっていつでも思いやるように
相手はただの他人でも、遠く離れた存在のスーパースターでも、同じ孤独を持つのなら思いやりが必要
死に思いを馳せる前に、一瞬でも生に想いを交わす
他人のために自分の感情を少しでも分けて、相手のために笑顔になれたなら、孤独の外の世界が広がるんだ

主演のキット・ハリントンを始め、ルパートを演じたジェイコブ・トレイブレイくんにその母親役ナタリー・ポートマン、キャシー・ベイツ、スーザン・サランドンなど豪華ながらそれぞれが最高でした
ジェシカ・チャスティンも出演予定だったので楽しみでしたがカットされてしまったみたいで残念です
個人的に好きだったのは記者を演じた『Crush』のタンディ・ニュートンでナタリー・ポートマンとこの二人はここ最近で最も生きた演技をしてました

グザヴィエ・ドランの映像は毎回叫びたくなるほど刺激的で、今作の音も彩もカメラワークも35mmの手触りも、その才能に欲情してしまうくらいに大好きで、ドランがずっと描いてきた母と子の関係性へのアンサーのようでもあり、エンディングはとても気持ちのいいものでした。
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