Kumonohate

ノー・エスケープ 自由への国境のKumonohateのレビュー・感想・評価

3.8
アルフォンソ・キュアロン監督の息子であるホナス・キュアロンのデビュー作。国境を越えてメキシコからアメリカに入ってくる不法入国者たちを猟犬とライフルで次々と殺害してゆくアメリカ人ハンターと、彼から逃げ惑うメキシコ人移民の恐怖と戦いを描く。移民もハンターも背景は殆ど語られず、沙漠を舞台にした緊迫の人間狩りが延々と続く。親父の「ゼロ・グラビティ」の元ネタとも言われているらしい。

実際に米墨国境で起きている出来事の取材に基づいているだけあって、リアリティと緊張感は充分。ポリティカルにはタイムリーな企画だが、政治的主張はそれほど感じられない。ただ、ここまで極端では無かろうが実際に起きていそうだと思わせるし、仮に起きていたとしても “人知れず” かもしれないとも思わせる内容。そう考えると、国境問題や移民問題の深刻な現実を抉っていると言えるかもしれない。同じような風景が延々と続き、狩る方も逃げる方も同じやり方を続けているだけなので、多少飽きることは否めないが、スリルと緊張感と現実の重みでじゅうぶん乗り切れる。

机の上で地図に定規でスーッと線を引いたように定められた国境のイージーさや滑稽さ。しかし、地形的特徴や歴史的経緯を考えると、そうせざるを得なかったとも言える問題の根深さ。みたいなことを考えさせられるノーナレーションのドキュメンタリーを見ている気分になる。
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