Kapporiya49

ロシアン・スナイパーのKapporiya49のレビュー・感想・評価

ロシアン・スナイパー(2015年製作の映画)
2.9
ウクライナ侵攻が継続する2022年の今、本作が公開された2015年とはかなり製作陣の意図とは違って観える作品なのではないかと思いながら観た。

戦争映画、歴史映画としてはなかなかにリアリティがあり、戦地の激しさと悲惨さをよく描写してくれているのが良かった。

舞台はキーウ、オデーサ、原題は何より『セヴァストポリの戦い』という通り、ウクライナ。
主役はウクライナ人である独ソ戦の女性狙撃手の英雄リュドミラ パブリチェンコ。彼女を時に冷徹で時に可愛らしいという見事なバランスで演じるのは、ロシア人であるユリヤ ペレシルド。

つまり、セヴァストポリを含むクリミア半島でのロシアとウクライナの軍事衝突の翌年、共通の英雄を両国の人々が感情移入できてなおかつ戦争はできればしたくないよねという印象も与える内容で作られた、なかなか複雑な作品。

当然いま観れば、女性イメージを描き直す映画が次から次へと出てくる2022年のいまに呼応する感覚もある。
リュドミラは女だからと特別扱いされるのを嫌い、才能と実力を発揮して300人超を殺し、なんならナチスドイツの兵士を復讐心からすぐには殺さずいたぶって殺そうとさえする。この辺りの心情描写は生々しい。

そして何よりも、彼女はウクライナ人でありソ連人であってもロシア人という意識は無かったはずだと思うと、今のウクライナの状況がより悲しく思えてきた。
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