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ハッピーエンドのmのレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
4.8
ハネケ監督で題名が「ハッピーエンド」なんてどう考えても最悪な事にしかならないし実際皮肉なラストを迎えるが、この映画から感じるのはむしろこれまでのハネケ映画よりも人間に優しいという事だった。
主人公一家は大体皆ごくごくありふれた形で壊れている。結局皆この世界のしょうもない枠組からは逃れる事ができないが、そのみっともない悪あがきを冷静に見つめつつもどこかに優しさもあるように感じる。後半の誰も責めない祖父と孫の告白シーンが特に。彼らはまともだからこそ苦しんで罪を犯し、懺悔する。

監督の映画話法の円熟が体感時間の速さに繋がっている。地味でこじんまりとした物語なのに、するすると面白く観れてしまう。今までで一番見易いハネケ映画。

スマホやSNSといった現代的なツールをハネケ監督が明確な悪としては描いていないのが意外(よくある日本映画だと分かりやすく落として描くのに)。何より若い世代の事を単純な『怪物』にしない事が素晴らしい。

youtuber少年のバカ映像やSiaをぐちゃぐちゃに歌うカラオケシーン、そしてクライマックスと爆笑できるシーンが度々あるのもまた意外だった。

イザベル・ユペールは流石の貫禄で格好良くて、子役ファンティーヌ・アルドゥアンは逸材。欲の無い撮影も良い。


最終的にあの2人にとっての『ハッピーエンド』にならない事が皮肉であり、しかしそれもまたハネケの厳しい優しさでもあると感じた。
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