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ガタカのMUAのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.3
完璧な遺伝子操作をされず、運命に委ねて生まれた「不適正者」の主人公。身分的にほぼ実現不可能な夢・宇宙飛行士に強い憧れを抱き、ふと知り合った身体障害者の「適正者」になりすまして夢への実現に奮闘する。
しかし突如殺人事件が発生し、主人公の身元が危うくなる・・。

徹底的な遺伝子差別/SFの話なのにも関わらず、「夢のために決して諦めない」主人公の生き様そのものがシンプルで強いメッセージとして伝わる。


色々考察はあるけど、1つだけ。
遺伝子的に劣っている不適正者を”神の子”と呼ぶ様子は、神に対する傲慢さを示している。
「適正者」として生まれた実弟の存在により、少年時代に感じた両親からの愛情の偏りが生じていたのであれば、なぜ主人公が宇宙を目指したのか理解することが出来そうだ。

宇宙の無重力空間を「胎内に似ているらしい」と話す主人公に取って無重力は何にも縛られないという意味であり、”神の子”である彼が同じく”神によって作られた”大いなる宇宙・大いなる愛に包まれるための、元来の「故郷」への帰還とも見て取れる。
これは前述した、完璧な弟の存在に両親からの愛情を奪われたという彼なりの悲しみが無意識に愛を求めた子宮回帰願望とも言えるのではないかと。

どことなく「ゼロ・グラビティ」と比較したけど、
ゼロ〜 は地球を命の象徴・母体としたが、ガタカは宇宙こそ生の象徴と主人公はとらえている。
両者の行き先は正反対なのにもかかわらず、主人公たちの境遇により各々の最終地点が命ある場所として描かれているのが面白かった。

めっちゃ良い映画でした。
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