緑青

キングスマン:ゴールデン・サークルの緑青のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます


観客に見たいものがあって、その期待さえ裏切らなければ、いかに予想を裏切ってこようと筋を違えていようと面白い作品になる。それを見せつけられた思いがする。

キングスマンシリーズ2作目、冒頭からプリンスのLet’s go crazy に合わせて王道のカーチェイスがある。なんでプリンス?!とか思うけど関係ない。無茶苦茶にノリがいい。テンポも勢いもキレもいいけど笑っちゃいそうになる非現実的な銃撃&肉弾戦が繰り広げられる。
そこから一気にびっくりすることがいっぱい起こる。
一言だけ言わせてほしい、「いや、その棚と眼鏡は生体認証にしろよ!」。
キングスマンがエグジーとマーリンを残して全員一気に殺された時はさすがに唖然とした。なにせ私は前作観ずにこれ観てるから、出てきたてのキャラが「いいな、推そう」と思った瞬間に死んだわけである。初見は正直ハリーも「なんか重要人物なんだろうな!」だった。そのあとSSを観て思わず2回目に行った時は流石に感慨深かったデス。

そのあとは説明が億劫になる程度には長い。飽きないで魅せてくれるのは監督と役者の手腕だ。
アクションシーンがかなりあって、ひとつひとつ、「観たことのない映像」を作ろうとしている感じがとても良いと思った。スーツで舞うエージェント、全員カッコいい。あと、キャラクターを作り出すのが上手だ。チャーリーのなんとも抜け切らない育ちの良さとかを私は愛する。エルトンは評価されるべき、めっちゃ笑わせてくれたし、展開が締まった。テーマ性もかなりガッツがある。ハンバーガー食べたくなった私はサイコパスなのかもしれん。

なんといっても今回の主人公はエグジーだし、ハリーだし、いわずもがなマーリンだ。
コリン・ファースの演じ分けの確かさがこの映画のフィクションとしてのリアリティを担保している。自然に見えるかすかな仕草や目線に溜息がでる。バーファイトはハラハラしてしまった。ポピーランドでのアクションはもう、圧巻です。エグジーとの共闘なんて全ファンが観たかったはずだ。グレーのダブルでサイドベンツは一種の凶器かなというくらい性癖に刺さった。みんなハリーのこと大好きかよ。
そして、某魔法使いである。彼はハリーの幸福のために「あなたが必要だ」と言えなかったのだろうなと思う。GCのせいでカントリーロードはしばらくトラウマである。あの直前の「何年も前から始まっていた」はエグジーじゃなくてハリーに向けた言葉だろう。ハリーが納得すればエグジーは従わざるを得ないから。そしてなんども目を見てふたりのガラハットに頷きかける。カントリーロードを朗々と歌って、「田舎に帰れ!」とポピー達の鼻っ面に突きつけているようなもんだ。今回も全力でアメリカをバカにしていくスタイル。状況は笑っちゃうのに、すんでのところで泣くところだった。最後まで彼は「エージェントが実力を発揮できるように場をセッティングする」という仕事を完璧に成し遂げた。すごくこう、これ言ったら怒られそうだけど、「銀魂」的な感情の揺さぶり方をしてくるシーンだと思う。
にしてもさあ。酒飲んで泣いちゃうところに始まって、そのキャラで「ジョン・デンバーが好き」って可愛すぎないか、マーリン。正気を失って冷静になるレベルだわ。絶対3作目で改造した義足をつけて戻ってきてくれると信じているんだけど。「メカ担当」だからね!(あんまりなネーミングだと思う。メカて…一応指導教官だったのに…)

エグジー結婚しちゃったけどキングスマンはどうなるんだろうか。先が読めないだけにワクワクする。監督が「期待を裏切らない」ひとだとわかっているからじっと待っていようと思う(どうでもいいがテキーラの吹き替えが中村悠一さんと聞いて納得した。今回こそ出番が少なかったけど次回に期待しかない)
この映画から私の洋画沼が始まったのだということを、私は将来の自分のためにここに残しておこうと思う。ありがとうキングスマン。この映画を映画館で観られた私は幸せだ。またいつの日か、今度は「終わりの始まり」に出会えることを祈って。
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