にく

6月の取引のにくのレビュー・感想・評価

6月の取引(2015年製作の映画)
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M.A.ラモス『6月の取引』(15)。ビル群をヘリで俯瞰するエスタブリッシング・ショット。「主人公」4人の様子の並行モンタージュ。決してカメラを見ることのない彼らのクロースアップ・ショット。ある種フィクショナルな構造が捉えるブラジルの大都市サンパウロ。W杯前後の「リアル」な情景。
ナレーションのない観察映画でありながら、他方でハリウッド的ということもできる本作の過度に「映画的」な構造を唯一、逸脱するのが、ある若者が機動隊に連れて行かれそうになった瞬間に「主人公」の一人(デモ指導者)が発する「この様子を映画に撮ってくれ」という台詞ならざる台詞=叫び。
撮影のL・バルビがかかる私の感想に答えて曰く「その様な指摘を嬉しく聞いたが、映画がフィクションであることと演出すること(ミザンセーヌ)の間には差があると思う」。ここから私はYIDFF2015で「フィクションであることを恐れないドキュメンタリー」について考えることとなった。
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