TAK44マグナム

グラン・ノーチェ!最高の大晦日のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.5
撮影は続くよ、いつまでも!


「気狂いピエロの決闘」などで知られるアレックス・デ・ラ・イグレシア監督による、大晦日用の歌や踊りのお祭り番組の撮影現場を舞台としたドタバタ劇。
本当にずっとドタバタしています(苦笑)


冒頭、ノリに乗っているダンスの撮影。
まず、いきなりカメラのクレーンが落ちてきて人の頭が潰れます(汗)
観客を演じるエキストラがひとり脱落したとあって、画面映えのために急遽、人員が補充されることに。
それが一応、主人公のオッサン。
半年ぶりの職なので、自宅で用事があろうが無視。はりきってスタジオに駆けつけます。
するとスタジオの外は異様な雰囲気。
実は、不当解雇された連中がスタジオを取り囲み、解雇反対を訴える大規模な暴動をおこしていたのです。
周囲はもう戦争状態!
そんななので外には誰も出られず、何日も撮影を続けているらしいことが判明します。
この時点で嫌な予感しかしない主人公でしたが、そこはプロの派遣アルバイター、席につくと笑ったり手拍子したりと頑張ります。
しかも、隣の席が大層な美人さん!
フレンドリーに話しかけられて、こりゃラッキーと思っていたら・・・?

他にも、「ファンに精子を採取されてピンチのアイドル歌手」や「まるで神様のように振る舞う尊大な大御所歌手」、「大御所歌手に憧れるあまりに暗殺しようとしている丸坊主」、「ずっと相手の足を引っ張りあって喧嘩ばかりしている芸能人夫婦」など、奇異な人々が撮影に参加していて、とにかく早口でまくしたてながらドタバタしているのを半笑いしながら観る映画です。
凄いのは、ハイテンションをずっと保ち続けている事で、意外とドカッと笑える箇所が無い代わりに、やたらと高いテンションがキープされたまんま終わります。
ただ、出だしからしてアゲアゲなので少々疲れる映画でもあるでしょう。
個人的には、抑揚がないのは辛いものがありますが、尺的にギリギリ耐えられたという感じでした。
スペイン語は捲し立てるように聞こえるので、余計に忙しく感じてしまうというのもありますね。

最後はワーワーキャーキャーいって何が何だかで終わるのですが、オチそのものは些か弱い。
結局、何も解決していないような気がするし。
イグレシア監督作だと「気狂いピエロの決闘」と「クローズド・バル/街角の狙撃手と8人の標的」を観ましたけれど、本作はテンションは高いながら、作品が持つ潜在的なパワーが若干心許ないような気がします。

しかし、終始一貫して作品を包んでいる「出鱈目なまでに嘘くさいゴージャス感」がバカバカしくて心地よいし、ヒロインを演じるブランカ・スアレスは相変わらず魅力的。
基本的にイグレシア作品は面白さは保証されているので、嫌なことを忘れたい夜のお供には最適だと思います。
惜しむらくは、ここまで破茶滅茶にやるなら、もっと突き抜けて欲しかったかな。


ロン毛のアイドル歌手は、どうしたら女子にモテるのか、良い参考になるほど爽やかにエロな兄ちゃんで好き(笑)


NETFLIXにて