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バジュランギおじさんと、小さな迷子のkochabのレビュー・感想・評価

5.0
久しぶりにインド映画。映画館の予約をする時に「上映時間、(予告編込み)1時間50分程度か~」と思って予約したのですが、大きな間違えw。実際は本編だけで159分。いや、これまた久しぶりに大作でした。(^^ゞ

序盤はいかにもボリウッド映画。いきなりオレが主役だダンス(あるある)、ヒロインも踊れないとダメ(あるある)、色味は派手(あるある)、あり得ないくらい大人数のダンス(あるある)、え?そこまでシナリオ深掘りするの?(あるある)、結婚は認められない(あるある)といったところをしっかり押さえているので、ダンスを観ているだけでも楽しくなります。

ただ、本作が秀逸だと思うのが、裏に隠されたテーマがあるところ、ですね。特にインド・パキスタンの政治、そしてヒンドゥー教とイスラム教との関係です。宗教対立に始まり、政治闘争もあって、それが今でも続いていることがデモなどからしても見て取れます。しかし本作はそこを「こうすればひょっとしたら両者の関係が上手くいくんじゃない?」という提案をしているところにあります。

一つはお互いの宗教について、勝手な思い込みなどがある、というところですね。主人公がイスラム教のモスクに入るかためらうところでも、イスラムの司祭は「いつでも入ってきなさい」と誘ってくれる。今まで、実は「知ろうとしていなかった」とさえ思うくらいに、です。そして次の段階として、知ったなら実践もしてみる、日本流に言うなら「郷に入っては郷に従う」ですね。お礼の挨拶や友人としての挨拶も、都度都度、場面場面で変わっていくところもしっかりと見て取ることができます。

対してもう一つが「面子」という特に大人の問題。今まであった事を水に流せず、戦争のことを持ってきたり、冤罪に陥れようとしたり。それらは「子供には関係ないでしょ」と言い切ってさえいます。

そして最後に信ずる神は違えども、「人に対してなんとかしたい」という気持ち、底辺の心持ちは変わらない、というところ。人の生き様に共感するのであって、神などは「個性」のようなもの、と描かれています。

本作はインド・パキスタンの関係を描いていますが、どんな争いの地域でも言い換えることができるくらい、懐の深い映画だと思います。

てっきりかわいいお嬢さん(劇中もかわええなぁ~、と思って見ていましたw)を家まで送り届けるだけかと思っていたら、いやいや、ラストがこうなるとは思ってもみませんでした。早速今年の「私的映画撰2019」ノミネート作品が出てきて、幸先いいな~、と思った作品でした。
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