いののん

バジュランギおじさんと、小さな迷子のいののんのレビュー・感想・評価

4.0
最高に格好いいウォンビンと、めちゃんこいけてるキム・セロンが、インドに行くとこうなるのかもしれない。インド版『アジョシ』(多分、ちがう)(ちょっと、そう)。


とてもとても親しみやすい、敷居の低ーい、映画。そこが、いい。大衆(わたしもそのうちの、ひとり)がこぞって、好きといえるような映画。そこも、いい。みんなして涙して、良かったねっていえるような。


インドとパキスタンの国境問題。過去のしがらみ。理解し合うのが難しい、宗教の違い。いくらでも尖った映画にもできるだろうし、問題提起型にもできるだろうし、観るのがキツい映画にもできるだろうに。でも、多くの人に観てもらいたいから、できればパキスタンの人たちとも気持ちを分け合いたいから、まずは大国インドの人々が、隣国への心の垣根を取り除くことができるようなものを、と、こういう映画になったのだろうと、推察する。


こういう映画を観ると、素直に、優しくなりたいと思う。とことん、優しくなりたいと思う。人の心にある善意や、まだ私の心にあるかもしれない善意を、信じたいと思う。信じる気持ちを、信じたいと思う。憎しみを乗り越え、過去のしがらみを乗り越え、隣国と手を携え、ひいては世界と手を結ぶことができる。そういったことを、信じてみたいと思う。


バラジュンギおじさんの勇気ある&愛にあふれた行動を知り、国境付近に集まった多くの人たち。自らの心にある善意を目覚めさせられた人が、こんなにも集まるんだと、胸が熱くなる。多くの人の歓声、声援。


でも同時に、私は懐疑的にもなる。ここに集まった人たちは(私も含めて)、無自覚のうちに、憎悪によっても集まって、罵声をあびせる人たちにもなるんだと。とても簡単に、オセロのように、白から黒に裏返る。そのことを私は、知っているような気がする。


んだけども、まずは、白になろう。オセロの白になろう。私たちは、そうなれるんだということを、まず、思い知ろう。あのカシミールの雪山のように。

理想郷を夢見たっていいじゃないか。信じることを恐れずに。バラジュンギおじさんや、彼の周りの人たちのように。


インド音楽に浸りながら、ラストは、ジョン・レノンのイマジンを脳内で鳴り響かせてしまった。
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