けまろう

カルテル・ランドのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

カルテル・ランド(2015年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

『カルテル・ランド』鑑賞。「悲惨」な作品は数多くあれど、嘗て現実の社会問題を扱った作品でこれほどまでに恐ろしい映画があっただろうか。製作にキャスリン・ビグローが入っていることもあって、自信が脅かされかねない真の恐怖(テラー)が深く伝わってくる作品。
麻薬カルテルが支配するミチョアカン州。勇敢な町医者ミレレスが自警団を組織して立ち上がり、支配層のカルテルを駆逐していく物語…であれば、痛快な英雄譚として気持ち良く鑑賞できるであろう。しかし、実態は正義を貫こうとしたミレレスが政府に収容され、カルテルを駆逐した自警団は悪に乗っ取られ、新たなカルテルとして再び街を支配している。しかもその背後に政府という強力な後ろ盾を得て。冒頭で麻薬を製造しているシーンが、最後に真の意味を以て提示される凄まじさと言ったら筆舌に尽くせないだろう。「正義は揺らいでも、悪は揺らがない」そのキャッチコピーは何も大げさではなく、この映画が現実として捉えているのだ。監獄から監視カメラを見つめるミレレスの視線、それこそが私たちの義心に訴えかけている。
『カルテル・ランド』は素晴らしい題名だ。悪は何度でも蘇り、決して潰えない。
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