タマル

シティ・オブ・ゴッドのタマルのレビュー・感想・評価

シティ・オブ・ゴッド(2002年製作の映画)
5.0
現代暴力映画の傑作。
『グットフェローズ』に『パルプフィクション』を足したような軽快かつ入り組んだ語り口で、60〜80年代ブラジルのフェヴェーラ「シティ・オブ・ゴッド」の暴力構造を描き出す。特に『グットフェローズ』の色濃い影響が見られ、子供達が銃をぶん回して殺しあう凄惨な光景を繰り広げながらも、その軽妙な音楽と編集テンポで全体的にはポップな印象を受ける作品だった。

「シティ・オブ・ゴッド」という街は暴力がその中核を占める空間でありながら、映画内では恋愛あり友情ありのまさに青春映画的な密接な関係性が展開される場でもある。これはまさに「青春」の只中にある子供達がこの街の主要な構成員であることを要因としている。この街のボスは大人ではなく子供なのである。
こうした子供達の青春的な深い人間関係への渇望と無機質な暴力のコントラストがなんとも素晴らしい。最も暴力に振れたものが支配者になる。しかし、暴力を振りかざすものは真に深い人間関係を築けず、成長することができない。必然的にガキがその街のボスになるし、街のボスであり続けるためにはガキであることを強いられる。それはより絶対的暴力としての大人社会(公権力)への永続的服従を意味する。
そうした支配者=被支配者の境遇から脱するか。それとも甘んじるか。生き残るための暴力と解放への欲求がボスのリトル=ゼと主人公のブスカペという二者の対比によって象徴的に浮かび上がる。

「シティ・オブ・ゴッド」(神の都)は、成長=死という、本来の意味でのネバーランドなのである。
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