Kuuta

ハドソン川の奇跡のKuutaのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
3.8
結末はみんな知っていて、墜落までの猶予もごく僅か。下手な人ならアンビリバボーの再現ドラマになりかねない題材をこんだけまとまりの良いエンタメにできる監督の職人技。

直前の視点や場面設定の違いで、同じ墜落シーンでの機長サレンバーグ(トム・ハンクス)の見え方が180度変わる。このモンタージュと飛行機内での緊張感が最大の見せ場だろう。あくまでサリーの視点で進むので、いろいろな事実がグレーに見えてくるのが上手い。救助現場を船の上から呆然と見守るショットの「当事者なのに俯瞰している感じ」がとても印象的。

緊急時のアメリカ人のプロフェッショナリズムも見所。管制官すげーかっこよかった。随所に未だに9.11を意識せざるを得ないアメリカという国を考えさせられる。一つ見方を変えれば英雄は地獄。合理主義とかみ合わせの悪い職人。この辺はシンプルなイーストウッド節。

サリーの「勘」への問いが何度も投げかけられるが、事故調の描き方は若干悪役寄りすぎた印象。そもそも「容疑者」ってほどでもないし。本来描かれるべき「事故調もプロの仕事をしているだけ」とのバランスにはなってないのではとは思った。76点。
Kuuta

Kuuta