ちろる

火の山のマリアのちろるのレビュー・感想・評価

火の山のマリア(2015年製作の映画)
3.6
火山とコーヒーの匂いのする国ってどんなだろう?
火山灰に囲まれたヤ文明が色濃く残る生活、自然崇拝や鮮やかな刺繍の民族衣裳など、時間の止まったような原始的な文化との中に溶け込む整備された国道や携帯など、近代的な一面もある知らなかったグアテマラの細かな人々の生活の描写もなかなか興味深い作品。

地主の息子イグナシオと縁談が決まった後に幼馴染との妊娠が発覚したマリア。
ばれたらイグナシオの家に雇われの身である貧しい家族共々村を追い出されてしまう。
家族を全然見ていない使えない父と、何事も一生懸命な働き者の母。
母だけが持つ神秘のエネルギーを母親がマリアに教える2人の入浴シーンは暗闇の中で黒い皮膚が水に浮き出して、ゴーギャンの絵画のように美しかった。
ガハガハと笑い、性生活もはばからず話し、前半は若干ガサツさの目立ったマリアの母親が中盤からマリアに対して見せる力強い愛のカタチがじわじわと迫ってくる。
もう、「母は強し」しか浮かばない。
そしてこの村出てくる男どもがろくでなしばかりなのがグアテマラの女たちをより強くしているとしか言いようがない。

閉ざされた火の山だからこそ守られている神秘的な部分と、無教育によって農民たちが強いものに永遠と搾取され続ける闇の部分という2つの側面の描写は、ラストに美しく着飾ったマリアの表情にも反映されているようにも見え、最後まで複雑な思いにさせられる本作。
エンディングはなんとなくポップな民族音楽で締めくくられているが、そこにある現実は変わらない。
そして始終虚ろなマリアに心からの笑顔がいつか訪れるように祈っている。
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