「ジュラシック・パーク」の新シリーズ1作目がなかなか良かったこともあり、その2作目がついに公開するとのことで期待して鑑賞。Fallen Kingdomがどうなったら炎の王国になるのかはいつもの邦題なので置いておくとして、されどそもそもなぜFallen Kingdom=崩壊した王国なのかも謎です。
ジュラシック・ワールド事件から4年経過した島では以前として恐竜たちが暮らしていたが、火山の噴火により存亡の危機にさらされていた。パークの元責任者クレアは、旧ジュラシック・パークを建造したジョン・ハモンドの旧友ベンジャミン・ロックウッドが代表を務めるロックウッド財団からの支援を受け、元恐竜監視員のオーウェンと共に島へ向かう。早速ヴェロキラプトルのブルーに再開するオーウェンだったが、突如起きた大噴火により島は崩壊し始め、また傭兵ウィートリーの裏切りによりブルーを連れ去られ、彼らはウィートリー達の追跡を決めるのだが・・・という話。前半4分の1はまさに炎の王国で、前作の様々な恐竜たちが逃げ惑う姿や、施設全体が溶岩に飲み込まれる様子は胸が熱くなり、一瞬にして世界にのめりこめます。特に前作で良い働きをしたTレックスが今作でも素晴しい活躍を見せ、シリーズファンの心を掴みます。この新シリーズは過去作の絡ませ方が非常に上手く、前作を見ていないとわからないなどのストーリー根幹では無く、ニヤリとしたくなる範囲で過去作をリスペクトしているバランスが素晴らしいです。
そんな冒頭の島のシーンから一変して、急に坂道を転がりだしてしまう展開へ突入します。このシリーズの魅力は、恐竜が恐竜らしくないというか、恐竜なのに映画らしさがわかっていて、そこにいるよね?いるよね?いるよね?いたーーーーみたいな、予定調和のドキドキを味わえることだと思うのです。動物というより人間のように描かれているんですよね。しかし本作では物語自体の可能性を高めたいのか、恐竜が兵器にというストーリーを伝えるために人間達の闇を語るシーンが多く、肝心の恐竜たちはショーケースへ入れられたままでいまいちドキドキしないのです。確かに物語を複雑に構成したいことはわかりますが、この映画にはそれ以前にPopcorn Movieとしての価値があるわけで、テコ入れすべきはそこじゃない、と感じました。おまけにオーウェンの格闘シーンまでしっかり用意されており驚きです。確かに前作でオーウェンがブルー達を落ち着かせようとするシーンが話題になりChris Prattに注目が集まりましたが、あれはChris Prattかっこいいという印象だったわけではありません。誰が出ていようとこの映画の主人公は恐竜たちであってChris Prattではないので、彼の肉弾戦には正直残念な感情しか湧きませんでした。ハイライトは炎の島からの脱出で正直そこで終わってよかったかもしれないです。そういう意味では本作はポスターから考え直してもらいたいですね。Steven SpielbergはChris Prattかっこいいね映画なんて望んでいなかったと思います。
さて本作では新たにインドラプトルと呼ばれる遺伝子組み換え恐竜が作られます。人間で言えばCIAのMKウルトラ計画が有名ですが、獰猛動物達がそのような扱いを受ける日が来ることも容易に想像できますし、ましてや遺伝子の組み換えにより人間が種の創造主となることも、近い将来有りうるでしょう。新シリーズでは前作からそうですが、現代的テーマに踏み込むことは非常に面白いのですが、しかし結局前作から何も発展していないんですよね。本作はオークションシーン含め、恐竜が人々の道具にされてしまうところまで描いておいて、結論は前回と同じ。せっかく時間をかけてそういったテーマを扱ったわけですから、せめて話を先に進めてくれ、と思ってしまいました。最後の展開として、新時代へ突入することにはなりましたが、3作目はもうちょっと物語を考えないと、また同じお茶の濁し方では厳しいですね。今作は期待するハードルの下をするりと抜けてきたので、次作には期待したいです。
ちなみに新シリーズ2作目の本作は、前作監督のColin Trevorrowが「スター・ウォーズ/エピソード9(仮)」の監督業が忙しくなることを予測してか製作総指揮を担当し、監督はJuan Antonio Bayonaが担当しています。しかし昨年秋にルーカスフィルムが、意見の相違により「スター・ウォーズ/エピソード9(仮)」の監督からColin Trevorrowが正式に降板することを発表しており、まさに二兎追うものは一兎も得ずとなってしまいました。新シリーズ3作目の次作は、今のところColin Trevorrowが監督復帰で話が進んでいるようなので、よそ見をせず物語の巻きなおしに挑戦してほしいです。