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裸足の季節の一人旅のレビュー・感想・評価

裸足の季節(2015年製作の映画)
5.0
デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督作。

トルコの小村を舞台に、抑圧的な祖母のもとで育てられた5人姉妹の日常と行く末を見つめたドラマ。

トルコ出身の女流監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビュー作となった“社会派+ガーリー青春映画”の秀作で、イスラム国家=トルコに生きる10代の女の子たちの置かれた過酷な状況を通じて、イスラム社会の女性蔑視的実態を鋭く浮き彫りにしています。

『チャドルと生きる』『少女は自転車にのって』のように、イスラム社会における女性の性の問題に真摯に向き合った社会派映画であります。両親を事故で亡くして以来、厳格な祖母のもとで育てられてきた5人姉妹が、女性であることを理由に自由が制限された生活を余儀なくされる中、自由を求めて些細な抵抗に打って出てゆく姿を5人姉妹の末っ子:ラーレの視点により描いています。イスラム社会における女性の不当な境遇が華燭なく浮き彫りにされていて、女性に対する処女崇拝が“初夜後のシーツに染みた血をチェックする”という異様な慣習と共に鮮烈に映し出されています。加えて、学校に通うことよりも“良妻になる為のトレーニング”を優先することが当たり前のこととして描かれていることに驚かされますし、恋愛を経験する前に家族が決めた男性と強制的に結婚させられるという女性にとって耐え難い不自由までしっかり描き込まれています。

イスラム(トルコ)社会における「女性」を描いた社会派な一作ですが、主人公が10代の5人姉妹ということもあって『ヴァージン・スーサイズ』のようなガーリー青春ムービー的な作風になっています。姉妹が強いられる不当な不自由と息の詰まる日常と、思春期の女性として自然な欲望を表出させてゆく姉妹の精神的自由と若さゆえの抑制の利かないエネルギーが鮮烈な対比をもって映し出されていて、女性の自然な感情と欲望の芽生えと発展を慣習や戒律に基づき人為的に抑えつけることの不自然さ、不可解さが浮かび上がっています。
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