賽の河原

ぼくのおじさんの賽の河原のレビュー・感想・評価

ぼくのおじさん(2016年製作の映画)
2.3
前半は笑いどころもあっていいが、後半のハワイシークエンスは間延びしてしんどかった。
ゆるいと言えば聞こえがいいがもう少し真剣に演出した方がよかろう。
特に違和感なのは時代感。セリフ回しやら家庭内の描写やらは古めかしさを感じさせる演出なのに、公園やら個展の会場やらカレー屋だの本屋は完全に現代。
別に小学生の作文の景品でハワイ旅行が貰える世界線なのでリアリティもクソもないだろうが、どういう態度で観ればいいのか正直戸惑う。
北杜夫の作品を今、映画化すること自体謎ではあるが、敢えて映画化するのであれば原作の肝をしっかり捉えて時代感やらを当てはめて再構成するといった工夫が必要なのではないか。
例えば松田龍平演じる変なおじさん。確かに変だし、面白いが、「ファニー」なだけで哲学を専門にした学者としての「インタレスティング」は皆無。もう少し頭をひねって「一見すると変なおじさんなんだけど、よくよく見てみると深い見識に裏付けされた行動をしている」のが子供にはわかるとか、劇中の人物には分からないけれど観客には示唆されるなどといった感じにした方が、おじさんも魅力的なキャラクターにならないだろうか。
後半の恋愛展開はもはやなんの意味もない。1人1人のキャラクターも作られてないし、戦争がどうのこうののくだりはなんなのか。中途半端な真木よう子のキャラクターの彫り込み(コーヒー農園への想い)的なものははっきり言って機能していない。
まだ戸田恵梨香方面に話を拡げたほうかよかった。
基本的にはアタマのおかしいやつらが2時間踊ってるだけの映画である。松田龍平を観に行くという意味では悪くないだろうが、こういう役柄の松田龍平なら他の映画やドラマで事足りる。それでも前半のコメディはまあまあ見られたものだ。草葉の陰で北杜夫はなにを想うだろう。
賽の河原

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