回想シーンでご飯3杯いける

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

4.5
現代の戦争の実態を、これまでにない斬新なスタイルで描いた素晴らしい作品。

映画の販促媒体には小難しい政治・軍事用語が並んでいるけれど、思い切って視点をひっくり返してみると、この映画の凄さが分かる。これはケニアの街角で焼きたてのパンを売る少女が主人公で、そのパンが売り切れるまでの数十分間を描いた作品なのだ。

そんな何でもない日常の風景の裏側で、世界各地の高官による大きな駆け引きが行われている。ドローンやIT技術が発達した現代では、かつての姿とは全く違う戦争が起きている。僕達の全く知らない場所で繰り広げられる戦争の恐ろしさを、映画ならではのミニマムでスリリングな手法で捉えた、これは全く新しい形の反戦映画だ。

お涙頂戴の台詞や、感動の美談や、グロテスクな実話が無くとも、最低限の映像と、僕達の想像力を喚起する演出があれば、こんなに緊迫感とメッセージ性に溢れた映画が出来るという事。終盤には、その最低限の映像さえ排除される展開が用意されている。そこから先は僕達の想像力が主役となる。