コミヤ

何者のコミヤのネタバレレビュー・内容・結末

何者(2016年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

「頭にあるうちはなんだって傑作なんだよ。お前そこからいつまでたっても出られないんだよ」

タクトに巨大ブーメランとなって帰ってくる彼の台詞はそのまま自分にまで飛んできそうな気がした。

SNSで自分のしたことをアピールする意識高い系の人のことを「寒いよな」って劇中のタクトみたいに思うことは否定できないし、自分なりのやり方で自己表現をして何かを発信しているそのような人に対して、何も生み出していないただの消費者の自分は何なんだって思う。

就活においても作り笑顔全開で大きく頷きながら話を聞く学生に対して「こいつやってんな〜」って少し引いた第三者の目線で見てしまう自分はまさに「何様」って感じに思う。

でも劇中の有村架純の「私たちはもうそういうところまで来たんだよ!」という台詞ように周りにも内定が出だして本命の企業の選考も始まった今、「寒い」なんてどうでもよくて逆にそう思われるくらいの当事者意識をもっと持って行かないとなと思った。

ラスト、「自分の人生の中にストーリーを見つけてその中で主人公になれるんだよ」という有村架純の言葉通り、面接で人生ありのままのストーリーを語ることができたタクト。本編で自分自身の嫌な面と散々向き合わされたが、そんな彼を送り出すラストショットには背中を押されるような気持ちにさせられた。

ただ彼は劇団という夢中になったものがあるってそれだけで素晴らしいと思うけど、、

どちらも表現するという意味で同じの、マクガフィンであるギンジの舞台と就活の説明会のモンタージュ?やツイッターというパブリックに向けたある種の舞台という性質を利用した後半の大仕掛け、さりげない視線や会話の噛み合わなさから産まれる上っ面コミュニケーションの気まずさなど短時間でここまで色々語りたくなるような細かなディテールが詰め込まれた本作は傑作だと思うので、これからも定期的に見返したい。
コミヤ

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