まさなつ

ある戦争のまさなつのレビュー・感想・評価

ある戦争(2015年製作の映画)
4.0
デンマークと言えば「ヒトラーの忘れもの」という重い映画がありましたが、「偽りなき者」の脚本家の監督作である今作も、白黒がはっきりしない、とても考えさせられる作品でした。

まず最初に、11人の民間人の方が、空爆で亡くなったことは大きな悲しみです。

デンマークから平和維持のため、アフガニスタンに駐留する部隊。その隊長の空爆の判断が問われ、軍法会議にかけられます。
ここでの裁判の争点は、「敵がいたかの確認をしたか?」
つまり敵が1人でもいたら、民間人が何人いても問題ないということ、、?

あの裁判は、いったい何の意味があるのだろうか、とても疑問に思いました。軍の規律を守るため?

ルールを守ったかどうかと言っても、戦闘状態の修羅場では、マニュアルどうりにいかない事は多々あり、臨機応変な対応が必要なんではないの?個々の判断が正しかったか、なんて、安全な母国の法廷で裁くなんてできるのだろうか?そういう意味で、この裁判自体が形だけのものにも見える。

一方で、当事者である隊長は、判決がどうあれ、自分の判断で11人の民間人が亡くなったことを一生背負うことになる。いっそ罰してほしい、でも家族が、、彼の複雑な心情が、とても痛々しいです。
事件が起こるまでに時間をかけて自国に残してきた、父親不在の家族の姿を映していたのは、ここに繋がるんですね〜。そういう意味でも脚本が巧みです。

敵味方がはっきり区別できた昔の戦争と違い、民間人の中に兵士が紛れ込むことの多い今の戦闘では、いくらでも起こりそうな事。「誤爆」ということもよく聞きます。
デンマークには徴兵制があります。スウェーデンも復活させるとか、、日本もいずれは、、?

「ヒトラーの忘れもの」も、「マン・ダウン」も、今作も、戦争のやるせなさに、なんとも言えない気持ちになります。
まさなつ

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