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天国はまだ遠いのatsukiのレビュー・感想・評価

天国はまだ遠い(2015年製作の映画)
5.0
ミシェル・レリスが「演じられた演劇」に対する「生きられた演劇」という概念について、エチオピア人の”ザール”という憑依儀礼を挙げているんだけど、その現象は誰かの立ち会いのもとでしか起こらないらしい。だから雄三と三月は、五月という観客がいる時のみ憑依することができる。濱口竜介監督にしてみれば、いささかフィクショナルすぎる設定な気もするけど、ドキュメンタリー映画のインタビューという形式を取っているし、バタイユ的に言えば「演劇化」である訳だし、劇中で(雄三と五月にとっての)セラピーであるというように、これは私とあなた、あるいは自己と他者の関係性への探求に他ならない。カメラの前で演じることでもある。三月が雨には濡れないし、匂いもしないけど、音は聞こえると言うように、天国がまだ遠いのは、雄三と五月に呼ばれているからだと思う。その2人が抱き合うショット。AVのモザイク処理をするインポの、チンコの大写しがなんと危ういことか。多分、勃起したら三月は天国に行くぞ。
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