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ダンケルクのbarneyのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.0
ストーリーが無いという試み。歴史のひとつのイベントを「主人公」にした新しい映画。


クリストファーノラン監督新作ということで迷わず劇場鑑賞して参りました。 まず最初にメンションしないといけないのは間違いなくサウンドトラックについてです。Hans Zimmerはまず間違いなくオスカーを獲ると思っています。
この独創的で狂ったサウンドが生み出す緊張感。予告映像からやばそうなのは伝わってましたが、映画感で爆音で体験するとほんとに凄い。
シェパードトーン(無限音階)というテクニックが使われていて、これが怖い!複数の音をボリュームを少しずらしながら同時に流すことでずっとボリュームが上がり続けているように錯覚するんです。同じボリュームで同じパターンを聞いているだけなのにどんどん緊張感が強くなってきます。ほんと怖いよ!!そこに爆音で空襲とか来るもんですから、歯を食いしばって耐えました。

これほどライド感のある戦争映画はいままでなかったと思います。他のどの映画よりもあるといっても過言じゃないと思います。
こんなにマイクロな視点で戦場を駆け抜ける絵は見たことがありません。

会話もほとんどありませんが絵を見ていれば状況はわかります。
「おれ、この戦争が終わったら~」「戦争に来る前は~」のくだり何かありません。
そんなこと話す陽気やエネルギーはないのです。
ワンダイレクションが名前なんていうんだよって聞くシーンがありますがまったく無視。そんな既視感のある会話は入れる気ないというメッセージが見えます。

またドイツ兵の姿や、ゴアを積極的に写さない姿勢もいいですね。



ありがちな批評として登場人物を掘り下げていないという点がありますが。これはノーランには別の意図があったのではないかと思います。
ビーチにいるすべての兵隊に等しく感情移入させたかったのではないでしょうか。(成功していると思います)
名前も知らない、話さない彼はビーチにいる他の兵隊と何も変わりません。生き残りたいという一心のみ、それも皆同じことです。

今までの戦争映画は当然のように主要キャラを少しでも掘り下げて感情移入させることに陳腐していました。それはその他の兵隊はどうなっても気にしないという姿勢にも見えます。
主人公は救出を待つすべての兵隊、むしろダンケルクでの出来事そのもの。


心優しい親子が救出に向かうところは胸にきました。緊張を少し解く良いアイスブレイカー的な存在になっていたと思います。

孤高のパイロットはあえてヒイロックに描かれていました。空戦の見たこと無い絵の新鮮さ、爽快感もあってすごく楽しかった。



プライベートライアンとある意味真逆を行く新しい戦争ジャンルへのアプローチをした映画。
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